#210 私が初回ミーティング前にピッチ資料を見ない理由

ピッチ資料では見えないもの
46(Youngrok) 2025.01.20
誰でも

以前住んでいた家の細かな壁の穴を埋める作業をしてみました。ユーチューブで一生懸命勉強して、ペイントと色んな道具を買ってやってみたのですが、思ったより目立ってしまって、むしろ問題が大きくなった気がしています。「人を呼べばいいんじゃないか?」と思うかもしれませんが、アメリカではこのような専門家を雇うにはかなりの費用がかかります。大工、配管工、電気技師のようないわゆる「ブルーワーカー」に分類される職業群の人手が少なくなり、彼らの費用が大幅に上がったからです。 これに関連して、米国のGen Z世代の中には、このような仕事を学ぶために職業学校に通う人が増えているというウォールストリートジャーナルの記事もありました。とにかく、来週までこの作業を終わらせなければならないので、一生懸命YouTubeとチャットGPTの先生に助けてもらわなければなりません!

***

私はファンド・オブ・ファンズのマネージャーとして、数多くのベンチャーファンドマネージャーとお会いしています。昨年だけでも200人以上のGPと話をしましたが、多くの場合、GPが主に話を進めます。たまにGP以外のチームメンバーが同席することもありますが、彼らが主役になることはほとんどありません。これは当然のことで、ファンド投資もスタートアップ投資も本質的には「人への投資」だからです。

初回ミーティングの前、私は基本的にピッチ資料を見ません。紹介文やLinkedInを確認する程度です。ピッチ資料を見ない理由は2つあります。第一に、私が会うGPの90%以上は知人の紹介で繋がった方々です。つまり、すでに知っている誰かがそのGPの可能性をある程度認めたうえで私に紹介しているということです。第二に、より重要な理由として、ピッチ資料だけではファンドマネージャーの本質を掴むのが難しいからです。

ベンチャーキャピタルの運営モデルは、ソーシング、デューデリジェンス、アロケーションの確保、投資後のサポートというシンプルな4つのプロセスに基づいています。このため、ピッチ資料に書かれる内容も似てきます。目を引くデザインや魅力的なデータ、将来の成功を約束するような内容が多いでしょう。しかし、実際には各GPの違いは非常に大きいものです。投資戦略、コミュニケーションスタイル、難しい質問への対応方法など、微妙ながら重要な違いが、それぞれのGPをユニークな存在にしています。

こうしたニュアンスをピッチ資料だけで理解するのは難しいです。資料を丁寧に読めばわかる部分もありますが、まだ会ったことのないGPのために多くの時間を費やすのは現実的ではありません。一方で、GPとの30分の会話は、短い時間ながら彼らのビジョンや考え方、コミュニケーションスタイル、そして誠実さを感じ取る貴重な機会になります。そのため、初回ミーティングはピッチ資料以上の価値を持つのです。

だからこそ、初回ミーティングはGP自身が主導するべきです。チームメンバーが同席する場合でも、GPが中心となって話を進めることで信頼関係を築き、LPとの関係を形成できます。もちろんチームメンバーもファンドの成功に欠かせない存在ですが、LPは最終的にGPに投資するのです。

とはいえ、ピッチ資料を全く見ないわけではありません。初回ミーティングでGPに興味を持った後、資料を確認し、細かい情報を把握します。ピッチ資料は、詳細を効率的に理解するための有用なツールだからです。

初回ミーティングは単なる手続きの一部ではありません。GPが自分たちのユニークな価値を伝える、非常に重要な瞬間です。特に昨今の厳しい資金調達環境では、その重要性はさらに高まるでしょう。初回ミーティングは単なるスタート地点ではなく、その後のプロセス全体を左右する決定的な瞬間なのです。

References:

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