#279 VCファンドを評価するメトリクス、何が本当に重要なのか
先週は、出資先ファンドであるHustle Fundの年次イベント「Camp Hustle」にスピーカーとして参加してきました。会場は、サンフランシスコ市内から車で1時間ほどのSaratogaという場所で、自然が豊かでとても穏やかな雰囲気のところです。 シリコンバレーの魅力の一つは、都市の活気を感じられる一方で、仕事でもプライベートでも、こうして自然に触れる機会が多いことだと改めて感じます。

Saratoga Springs
先々週はBridge Funding Global、そして先週はCampus Fundにて、VCファンドマネージャー向けのワークショップやセッションを行う機会がありました。両方のイベントで共通して受けた質問の一つが、まさにこれでした。
「LPとして、最も重視しているメトリクスは何ですか?」
非常によく受ける質問なのですが、実はこれに明確な正解はないと私は考えています。LPごとに重視するポイントが異なりますし、それぞれのメトリクスが示している情報も異なるからです。
大きく分けると、VCファンドのパフォーマンス評価は二つの軸に分かれるように思います。一つは時間価値を反映するIRR(Internal Rate of Return)であり、もう一つは投資金額が何倍になったかを示すマルチプル系の指標です。
IRRにもGross IRRとNet IRRがあります。特に複数のアセットクラスに投資しているLPの場合、異なる資産同士を同じ基準で比較する必要があるため、IRRを重視するケースが多いように感じます。
一方で、私は個人的にはマルチプル系の指標をより重視しています。
もちろん、マルチプルにもさまざまな種類があります。代表的なのはTVPI、DPI、MOICなどですが、これもGrossで見るのかNetで見るのかによって意味合いが変わります。結局重要なのは、「どのメトリクスが優れているか」ではなく、それぞれが何を示しているのかを理解することだと思っています。
そして、その中でも私が最も投資能力を判断する上で重視しているメトリクスが、MOIC(Multiple on Invested Capital)です。
理由はシンプルです。「スタートアップに投資したお金が実際に何倍になったのか」を最も素直に示してくれるからです。一方でTVPIのような指標には、マネジメントフィーやキャリーなど、LPが負担するコストが反映されます(されない場合もあり、複雑さが増します)。そのため、投資パフォーマンス自体は同じでも、フィー構造によって結果が変わることがあります。
例えば投資能力がほぼ同じ二つのファンドがあったとしても、フィーが低いファンドの方がTVPIは高く見える可能性があります。そのため私は、純粋な投資能力を見るという意味では、MOICが最も“プレーン”な数字だと考えています。
では次に重要になるのが、「その数字はどこから持ってきたものなのか」という点です。
思っている以上に多くのGPが、プレゼン資料の中で独自計算した数字を使っています。もちろん、それ自体が悪いわけではありません。ただ、その数字がどのような前提で計算されているのかを、LP側が一つひとつ検証しなければならないという問題があります。
そのため私は、基本的には四半期ごとの財務諸表(financial statements)に記載されている数字を最も信頼しています。そして、可能であれば監査(audit)が入った財務諸表であれば、さらに信頼性が高いと考えています。
特に小規模VCファンドの場合、監査を行っていないケースも少なくなく、財務諸表ではなくGP独自の前提やモデルに基づいて数字を出していることもよくあります。しかしLPの立場からすると、その前提をすべて検証するのは簡単ではありません。だからこそ、最終的には財務諸表が最も信頼できる情報ソースになると考えています。
結局のところ、VCファンドを評価する定量的なメトリクスには本当にさまざまな種類があります。最近はDPIを重視する流れもありますが、それもあくまで一つの指標に過ぎません。
重要なのは、「どのメトリクスが一番優れているか」ではなく、それぞれのメトリクスが何を示し、何を示していないのかを理解することです。そして最終的には、各LPが自身の投資目的や哲学に合った基準を見つけることが最も重要なのではないかと思っています。
References:
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