#53 ベンチャーキャピタルはいくら稼げるのか

多くの人々が思っているほど贅沢という訳ではない
46(Youngrok) 2022.01.10
誰でも

ベンチャーキャピタリストはどれくらい稼げるのか。多くの人がベンチャーキャピタリストはたくさん稼げる仕事の一つだと思うだろう。彼らは、お金持ちで、ワークライフバランスもよくて、異国の地の高級ホテルでバケーションを楽しむ、というイメージもあるかも知れない。それは一部のキャピタリストにとっては正しい。だが、実は多くのベンチャーキャピタリストがそのような贅沢をしているわけではないのだ。

ベンチャーキャピタリストの収入源は、マネージメント・フィーとキャリード・インタレストの2種類に分かれる。マネージメント・フィーとは、ファンドへの出資者であるリミテッド・パートナーがベンチャー・キャピタルに定期的に支払う手数料のことであり、一般的には2%だ。つまり、リミテッド・パートナーが40億円をコミットしている場合、ベンチャーキャピタルは毎年8,000万円を手数料として受け取ることになる。これは、主にファンドの従業員への給料やその他のファンドを運営するための経費に使われる。年間8,000万円というのは、一見すると、結構な金額に見えるが、その内訳を見るとそうでもないことがわかる。

例えば、ゼネラル・パートナーが2人、アソシエイトが1人、パートタイムのエグゼクティブ・アシスタントが1人いて、以下のように給与を支払うと仮定しよう。

  • ゼネラル・パートナー1:1,750万円

  • ゼネラルパートナー2:1,750万円

  • アソシエイト:1,500万円

  • アシスタント(パートタイム):500万円

このシナリオの場合、給与の総額は4,500万円かかる。従業員に対する保険などの福利厚生も必要なので、給与の15%程度がさらにかかると仮定すると、総人件費は5,200万円程度になる。8,000万円のフィーの残りである2,800万円は、イベントの開催、マーケティング、会計、テックツール(メール、ホームページ)、交際費、オフィスなど、その他の費用に充てる必要がある。決して余裕があるとは言い難い。

+ 8,000万円(フィー収入)- 5,200万円 (人件費)- 2,800万円ドル(その他経費)

1,750万円を稼ぐというのは、なかなか良いことだと思うかも知れない。しかし、考えなければならないことが2つある。1つ目は、機会費用である。シリコンバレーの多くのテック企業は、かなり高額の報酬を支払う。例えば、Googleのソフトウェアエンジニアは3,000万円以上稼ぐことができる。DoorDashはシニアエンジニアとセールスマネージャーに2,500万円を支払う。もうひとつは考えないと行けないのは生活費で、特にサンフランシスコのベイエリアは非常に高い物価で知られる。例えば、サンフランシスコでまともな1LDKのマンションを借りるには、最低でも月30万円はかかる。色々な税金はいうまでもない。1,750万円が少ないと言いたいわけではないが、これくらいでは、ジェネラル・パートナーが贅沢な暮らしはできないのだ。家族がいるパートナーにとってはさらに状況は厳しくなる。

キャリード・インタレストとは、いわゆる成功報酬のことである。一般的には20%である。これはどういうことかというと、上の例と同様に、ファンドへの出資者であるリミテッドパートナーが40億円をコミットしたとして、ファンドが3倍のリターンを上げた場合、ベンチャーキャピタルは利益の20%、つまり16億円を得ることになる[40億円 x 3(リターン)- 40億円(元本)= 80億円(利益)]これは結構な金額だが、そのリターンを完全に実現するには、10ー12年という時間がかかる。忍耐が必要なのだ。さらに重要なことは、ファンドレベルで3倍のリターンを作るのはかなりハードルが高い。全てのファンドがこのレベルのリターンを実現できるわけではない。

もちろん大型ファンドの場合は話が違う。しかし大型ファンドになるまでの道のりは長く、一握りのファンドのみが大型ファンドへと成長する。その道のりにいる多くベンチャーキャピタリストは必ずしも世間が思っているほど贅沢な生活が出来ないのである。さらに、大金を稼げるかどうかも不確かであり、たとえそうであっても、長い時間がかかる。

なので、スタートアップの起業と同じように、お金だけがベンチャーキャピタリストを目指す最大の原動力であってはいけない。次の未来をつくるファウンダーやスタートアップに対する真の情熱が長年必要な仕事なのだ。そうすれば、意味のある報酬はずっと後にやってくるのである。

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