#235 スタートアップの非上場期間の長期化、対応策は?

IPOまで待たずにセカンダリーでの売却
46(Youngrok) 2025.07.14
誰でも

先週、もう数週間で3歳になる上の子が通っている幼稚園で、卒園式(実際には同じ幼稚園の次のクラスへの進級式)がありました。2歳で入園した頃は言葉も理解できないような状態でしたが、今では先生のインストラクションに合わせてみんなで楽しそうにダンスを踊れるまでに成長しました。その姿は思ったよりずっと結構感動でした。子どもが成長するのは嬉しいことです。でも、その一方で少し寂しい気持ちにもなりますね。このような感情にも慣れていかなければいけませんね。

Little Steps, Big Dreams Ahead

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1990年代から2000年代初頭に生まれたスタートアップは、創業から株式公開(IPO)までのスピードが速い傾向にありました。2004年に設立されたFacebookは、2005年にシリーズAの資金調達を受け、その後2012年にIPOを果たしました。1998年に設立されたPayPalとGoogleも、1999年に初めてのベンチャーキャピタル投資を受け、それぞれ2002年と2004年に株式を公開しました。このようなスピード感は、今日の基準では非常に速く、一般的に10年をファンド期間とするベンチャーキャピタル(VC)ファンドが、10年以内に投資をし、十分に投資資金を回収、収益を上げることが可能でした。

しかし、現在の状況は大きく変わっています。近年、スタートアップがIPOに至るまでの時間がますます長期化しています。例えば、Databricksは2013年に設立され、NEAなどの著名な投資家から資金調達を受けましたが、初回投資から12年経過した現在でも株式公開をしていません(今年中にやるという噂はありましたが)。同じ年にGoogle Venturesから投資を受けたフィンテック企業のPlaidも、IPO計画は不透明な状況です。

現在、スタートアップが長期間非上場のまま残る現象はもはや例外ではなく、ベンチャーキャピタル業界全体を変える新たな現実となっています。スタートアップが非上場期間を延ばすにつれて、ベンチャーキャピタルファンドの投資回収期間も従来の10年サイクルを超えてしまい、かつては選択肢だったファンド期間の延長が今やほぼ必須となっています。

こうした変化とともに、主要ベンチャーキャピタルファンドはRIA(Registered Investment Advisor)への登録という戦略的な転換を図っています。2019年にAndreessen Horowitzを皮切りに、General Catalyst、Sequoia、NEAといった著名なVCが相次いでRIA登録を行いました。SECへのRIA登録により、公式の資金調達ラウンド(プライマリー)以外にも、セカンダリー市場で既存株主からより自由に株式を取得できるようになります。

VCがセカンダリー市場に積極的に参加する理由は明確です。成長している非上場企業の株式は、公式な投資ラウンドだけでは十分な持分を確保できない場合が多いためです。そのため、ベンチャー投資家は追加で株式を確保するためにセカンダリー市場を活用します。Andreessen HorowitzがCoinbaseに投資したケースが代表的です。同社はCoinbaseのシリーズB投資ラウンドで初めて投資を行った後、継続的にセカンダリー市場を通じて持分を追加取得し、最終的にCoinbaseのIPOで莫大な利益を実現しました。

この新たな環境は、初期段階(プレシード、シード、シリーズA)に投資するベンチャーキャピタルファンドにとって非常に魅力的な流動性の機会を提供します。例えば、企業価値が低い段階で初期投資したファンドが7~10年後にそのスタートアップがユニコーン企業へと成長した場合、IPOを待たずにセカンダリー市場でより大きなファンドに持分を売却し、高い収益を得ることが可能となります。

非上場市場が成熟し、流動性の確保が難しくなるほど、私はこうしたセカンダリー市場を通じた売却はさらに一般的になると予想しています。初期投資家はできるだけ評価が低い段階(バリュエーションが低い段階)で有望なスタートアップに投資を行うことで、将来的なセカンダリー市場での売却可能性を最大化すべきです。一方、後期段階に投資する比較的規模の大きいファンドは、セカンダリー市場での投資能力を高め、関連する専門人材を確保する必要があります。

このような変化は、ベンチャーキャピタル業界が根本的に進化していることを示しています。非上場市場はもはやIPO以前のステージとしてではなく、長期的に価値を創造し実現する主要な舞台として位置付けられています。この変化への適応は選択肢ではなく必須となっています。

Sources:

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