#233 VCファンドへの戦略投資の有効期間は10年ではなく2〜3年

次のファンドが立ち上がるまでが期限
46(Youngrok) 2025.06.30
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今週末、サンフランシスコでは世界最大級のLGBTQ+イベント「SFプライド」が開催されました。実にさまざまな人たちが街を練り歩いていて、サンフランシスコに来たばかりの頃は本当に目を疑うような光景でした。サンフランシスコはアメリカの中でも特にリベラルな都市のひとつで、プライドのような文化が深く根付いています。このように多様性、すなわち「違い」を自然に尊重する文化を思うと、この街が世界最大のイノベーション拠点のひとつとなったのは、もしかすると偶然ではないのかもしれません。

たくさんの人々が集まったドロレスパーク

たくさんの人々が集まったドロレスパーク

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VCファンドへの戦略的なLP(リミテッド・パートナー)出資の有効期間は、多くの企業が想定しているよりもずっと短いものです。一般的にVCファンドは10年間という期間が設定されているため、多くの投資家はLPとしての地位や影響力も同様に10年間持続すると考えがちですが、実際のところ、その期間はそれよりはるかに短いのが現実です。

実際にLPとして影響力や重要性を保つことができる期間は、次のファンドが立ち上がるまでの2〜3年間という短期間に限られます。この期間が終了し、新しいファンドが結成されると、新規LPが参入します。その際、GP(ゼネラル・パートナー)は新規LPに対してより高い優先順位を与える傾向があります。表面的には既存のLPとの関係が維持されているように見えても、実際の関心や優先順位は、現状の資金調達を支援する新規LPに向けられてしまうことは避けられません。

私自身、多くのLP投資を経験してきましたが、GPとLPが長期的な関係を築くには、最低でも2〜3回の連続した投資が必要だと感じています。そのためには、一度に大きな金額を投資するのではなく、複数回に分けて投資を行う方法が効果的な場合があります。例えば、9億円の投資資金がある場合、一度に全額を投資するのではなく、3億円ずつ3回に分割して投資する方法があります。これにより、実質的に約10年にわたってアクティブなLPとして関係を維持できます。また、ファンドの戦略変更やLP出資担当者の異動などによって、自社の戦略とファンドの方向性が合わなくなった場合にも、次のファンドへの投資先を柔軟に変更することが可能となります。

さらに、投資金額を決定する際には、各ファンドの規模に対して自社の出資金額が意味を持つかどうかを慎重に検討する必要があります。例えば、100億円規模の比較的小さなファンドであれば、10億円の出資でも大きな影響力を持つことができます。しかし、1,000億円規模の大規模ファンドに同額の10億円を投資しても、そもそも投資枠を得ることすら難しいでしょう。規模の大きなファンドの場合、中途半端な金額ではなく、最低限の金額で明確な戦略を持ってアプローチする方が賢明です。私自身も、著名な米国のVCファンドに500万ドルを投資した際、GPから「5,000万ドル以下の投資はすべて同じ扱いだ」と直接聞いたことがあります。

また、LP出資における戦略的価値は、単なる資金提供にとどまりません。有効期限を効果的に最大限確保するには、ファンドとの積極的なコミュニケーションを通じて、自社の戦略的ニーズや目標を明確に伝えることで、より深い関係構築が可能になります。定期的な情報共有やGPとの継続的な対話を通じて、単なる資金提供を超えた相互にとって意義のある戦略的パートナーシップを目指すべきです。

最新のテクノロジーやトレンド、スタートアップ投資や協業などを推進するためには、多くの場合VCファンドへの戦略的投資が不可欠です。しかし、多様なファンドや投資手法が存在するため、それぞれのファンドの特性や投資手法の微妙な違いを十分理解した上で投資を行うことにより、最大の戦略的リターンを得ることが可能になります。

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