#222 VC投資家という仕事は特権

すべての関係においては、謙虚さと思いやり、そして互いを尊重する姿勢が必要
46(Youngrok) 2025.04.14
誰でも

私が住んでいる家は、サンフランシスコによく見られるヴィクトリア様式の3世帯住宅です。私たちのすぐ下の階には、イギリス人とアメリカ人のご夫婦が住んでいて、お子さんが2人います。うちの子どもたちと年齢が近く、靴を履かなくても行けるほどの距離なので、特に上の子同士はすっかり仲良くなり、週に一度は一緒に遊ぶような関係になりました。ご主人は近々大学の教授に就任される予定なのですが、引っ越さずに近くの大学に通勤されるといいなと願っています。

したとうちの子供たち

したとうちの子供たち

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最近会ったベンチャーキャピタル(VC)ファンドのGPの方々から共通して耳にした言葉があります。それは、自分たちは「特権」を持っていると感じているということでした。熾烈な競争や目覚ましい成果、時には強いエゴで表現されるVC業界では少し意外な表現だと感じましたが、じっくり考えるほど深く共感できる言葉だと思えました。

上場株や不動産など、他の主要な投資資産クラスについて考えてみましょう。上場株に投資する際には、収益性、市場トレンドなど様々な定量的要素を分析します。不動産では立地、市場サイクル、物件の状態などを評価します。もちろんこれらの資産クラスにも人の要素はありますが、より広範で非個人的な要素を中心に評価が行われます。

一方で、ベンチャーキャピタルは非常に人間中心的です。投資家は主に創業者、すなわち初期段階の企業をリードする「人たち」に投資します。成功の鍵は、創業者の過去の実績と彼らが未来に実現したい目標を達成する可能性に大きく依存します。投資家は数字や資産も評価しますが、最終的には「人そのもの」を評価することになります。

この人間的な側面こそが、VC投資家の役割を非常に特別なものにし、特権を持つ理由となります。創業者たちは、自分のスタートアップに全てを注ぎます。絶え間なく働き、時には経済的安定や人間関係、さらには家族まで犠牲にして事業に専念します。つまり、投資家として、そうした方々の潜在力や情熱、誠実さを評価するという特別な責任と特権を持つのです。他人の夢や人生に大きな影響を与えることができるという事実は、私たちを謙虚にさせます。

私はファンド・オブ・ファンズのマネージャーとして同様の役割を担っています。私は創業者を評価する代わりに、スタートアップを発掘し、投資を行うベンチャーキャピタリスト達を評価します。彼らの判断力を理解し、トラックレコードを分析し、持続的に良いリターンを生み出す能力を予測します。結局、私の仕事もまた、個人の能力や可能性を評価するものです。これは決して軽く考えることのできない責任です。

もちろん、この仕事は非常に厳しく、長時間の集中と努力を必要とします。私にとっていわゆるワークライフバランスなどは存在しません。しかし、厳しい仕事であるからといって、その仕事が特権であるという事実が消えるわけではありません。むしろ求められる献身的な姿勢の大きさが、私を含む投資家の役割の重要性をさらに際立たせています。優れた人々の努力や潜在力を公平かつ正確に評価する責任を負っている以上、私たち自身も同じ水準の献身的な姿勢を求められます。

VC業界の投資家としてこの特権を認識しないといけません。これはすべての関係において、謙虚さと思いやり、そして互いを尊重する姿勢を求めます。迅速かつ明確な意思決定、透明なコミュニケーションも不可欠です。私は常に評価するGPの方々の時間と努力を尊重しようと努めていますが、それでも改善すべき点は多いと感じています。

激しい競争とスピード感あふれるベンチャーキャピタル業界において、他者の努力を評価する特権を理解することは、必ず果たすべき約束のようなものだと感じます。まず私自身からこの事実をしっかりと認識し、受け止め、与えられた責任をより良く遂行できるよう継続的に努力していきたいと思います。

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