#187 AIによる新しいSaaS、「Service」 as a Software

既存のSaaS、Software as a Serviceの時代は終わるのか?
46(Youngrok) 2024.08.12
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先週、日経新聞の金融専門メディアであるNIKKEI Financialに弊社GREE LP FundのエマージングVCに関する記事が掲載されました(リンク)。単に我々の視点だけではなく、記事を書かれた日経さんの山田さんの調査を基にさまざまな異なる視点からのインサイトも含まれています。とても分かりやすく、興味深い内容となっていますので、ぜひご一読ください!

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去る4月、シリコンバレーでB2Bエンタープライズスタートアップに投資する代表的なVCであるFoundation Capitalが「AI leads a service-as-software paradigm shift」という記事を発表しました。

この記事では、AIの発展により、サービスとしてのソフトウェア(Software-as-Service)からソフトウェアとしてのサービス(Service-as-a-Software)と、パラダイムが転換していると説明しています。この変化は、人のマニュアルな管理が必要なすべての産業を変えるチャンスであって、AIは単に生産性を向上させるだけでなく、業務遂行方法を根本的に変えると述べています。

サービスとしてのソフトウェア(Software-as-Service)とソフトウェアとしてのサービス(Service-as-a-Software)の根本的な違いは以下の通りです:

  • サービス型ソフトウェア (Software-as-a-Service): 何らかの目的のために一連の「ツール」を提供しますが、データを入力して結果を生成するのは依然として人が遂行します。

  • ソフトウェア型サービス (Service-as-a-Software): 人はデータを供給する役割だけを担当し、AIが結果を生成し、目的を達成します。 

ここで重要な点は、これまでのソフトウェアビジネスでは、企業がプラットフォームやツールを販売してきましたが、そのツールを使って目的の結果を達成する責任は、依然としてユーザーにあるということです。 AIによる新しいSaaSでは、目的の結果をサービスとして提供することになります。例えば、会計SaaSプラットフォームであるマネーフォワードやfreeeの代わりに、AI会計士のサービスを使うことになります。

これは、新しいSaaS企業は収益を生み出す方法も変わることを意味します。有名なクロスオーバー投資家(株式市場とVC投資の両方を行う)であるCoatueが毎年出しているレポートでは、価格設定は、有料アカウントの数に基づいたモデルではなく、消費量と価値提供の量に基づいて決定されると説明しています。Foundation Capitalの記事でその例を見ることができます。営業マンをサポートするSaaSの場合、営業マンの有料アカウント数ではなく、そのSaaSを通じて契約を成立させた顧客の数に応じて課金することになります。

AIのインフラ基盤が整備され、今後アプリケーション層の開発がさらにアクセラレートするにつれて、このような変化が起こるのは時間の問題だと思います。しかし、いつもそうですが、最大の疑問は「いつ」起こるのかということです。

現在、成功しているAI企業は、依然として有料アカウントに基づいた課金をします。PerplexityやCharacter AIのようなAI企業が良い例です。これは2つのことを意味します: 1)実際には、新しいSaaSが約束する価値ベースのサービスを提供するのが難しいということ、2)新しいSaaSがどれだけの価値を提供したかを測るのが難しいということです。

この点に関しては、私は後者だと思います。 例えば、私はこの記事を書いているときを含め、日常生活でPerflexityを多用しています。多くの時間を節約し、仕事の質を向上させることができていますが、実際にどれだけ役に立ったかを測定するのは結構難しいです。

しかし、確かなことは、この新しいSaaSがすでに私たちの生活の中で生産性を向上させている初期の兆候がたくさんあるということです。例えば、Perplexityがどれほど役に立ったかはわかりませんが、確実に役立っているのといった具合です。もしかしたら、私たちはすでに新しいSaaSの時代に突入しているのかもしれません。 そうであれば、そのスピードはこれから益々に加速していくでしょう。

References:

グリーが探す「次のセコイア」新興VC投資に勝算https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOGN030GG0T00C24A8000000?s=2  

AI leads a service-as-software paradigm shift - https://foundationcapital.com/ai-service-as-software/  

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