#127 大きな日本のVC、小さなアメリカのVC

VCのリーンな運用は国際的な競争力を養うための重要な要素
46(Youngrok) 2023.06.12
誰でも

先週、久しぶりにサンフランシスコに戻ってきました。韓国と日本はすでに夏のような雰囲気だったので、ここの天気を忘れて半袖半ズボンの気分で帰ってきたのですが、やはりサンフランシスコは寒いです!1年365日ずっと秋の天気です。 同じカリフォルニアにある(日本よりも大きい)LAよりずっと気温が低いので、近いうちにこちらに来る予定の方々は日本の秋を考えながら服を持ってくることをお勧めします。

サンフランシスコを本拠地とするフォー・バレルというカフェで久しぶりの朝コーヒーとドーナツ

サンフランシスコを本拠地とするフォー・バレルというカフェで久しぶりの朝コーヒーとドーナツ

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アメリカのVCと日本のVCには多くの違いがありますが、その一つはVCに所属する従業員の数です。一言で言えば、通常、日本のVCのチーム方が大きく、米国VCは小さい規模のチームで運用されます。

米国では約70億円($50M)規模のファンドに1~2人の人員で運用されることをよく見かけます。当社のポートフォリオVCファンドの一つであるSNRは、他のチームメンバーなしでパートナー1人が運用しています。ここの最近のファンドは140億円(100M)規模です。LinkedInを見ると、アンドリーセン・ホロウィッツとセコイアの従業員数はそれぞれ約600人、900人だそうです(LinkedInのデータなので実際の従業員数はこれより少ないでしょう)。そしてPitchbookによると、両ファンドのAUM(総運用資産)はそれぞれ約4.9兆円($35B)と11.8兆円($85B)です。 つまり、アンドリーセン・ホロウィッツの従業員一人当たり約80億円、セコイアの従業員一人当たり約130億円を運用しているという計算になります。日本では、小さな規模のVCでも二桁の従業員の数を見ることは難しくないので、一人当たりの運用額はもっと少ないはずです。

前の記事「#102 米国が最大のVCマーケットになったもう一つの理由」でお伝えしたように、アメリカにはVCのための外部サービスプロバイダーが多いため、多くのインハウスのバックオフィス人材を必要としません。 サービスの品質も良く、コストも日本の同業他社に比べてはるかにリーズナブルなようです。

最近、アメリカのVCはAIを活用して自分たちのファンドの運用をさらに効率化できる方法を模索しています。例えば、会議や出張日程の調整などにAIを活用するのです。私自身も投資プロセスを効率化するためにいくつかの自動化プロセスを実装しており、今後さらに多くのプロセスを実装する予定です。このような自動化とAIがVCの運用をさらに簡素化するのは時間の問題です。

これは、VCの将来の組織図が今とは異なるものになることを意味します。単にチーム規模をさらに縮小し、パートナーがより多くの給料を受け取るようになるかもしれません。 しかし、より理想的で現実的な姿は、ソフトウェアエンジニアのような伝統的なVCの役割ではないチームメンバーを雇用し、ファンドの運用を継続的に効率化したり、スタートアップやLPのために付加価値を提供するサービスを開発することです。NFXは、先週紹介した一種のVCデータベースであるSignalやスタートアップのピッチ資料のためのツールであるBriefLinkなどのサービスを無償で提供しながら、業界にてこのような取り組みをリードしています。

日本のVCはユニークなベンチャー市場構造をもつため、多くのチームメンバーを雇用しなければならない場合があります。例えば、日本のVCはアメリカのVCよりリポートの粒度が高く、頻度も多かったりするので、より多くのヒューマンリソースが必要です。隣国の韓国ではプロジェクトファンドが多く、同じVC内の他のプロジェクトファンドとの利益相反を防ぐために、各ファンドごとに独立したパートナーを雇用しなければなりません。 そのため、必然的にチームメンバーが多くなります。 

今後、日本のVCが運用を簡素化することでより効率的な組織を構築し、ファウンダーとLPのための追加的なサービスまで提供するためには、VC個々の努力以上の大きな変化が必要です。 つまり、多様なサービスプロバイダーの登場やよりスマートな規制の策定など、ベンチャー市場全体が一緒に進化しなければならないでしょう。 もちろん、LPの役割も非常に重要です。 日本のVCがグローバル基準に合った競争力を持てるように、必要なガイドラインを提示することです。現社会においてベンチャーとスタートアップの重要性が益々と高まってきているだけに、近未来にはそのような時期が到来すると信じています。

References:n/a

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