#102 米国が最大のVCマーケットになったもう一つの理由

米国VC業界の影武者:サービス・プロバイダ(ベンダー)
46(Youngrok) 2022.12.19
誰でも

先週はたくさんお客さんがサンフランシスコに来てくれました。新卒入社同期の友人二人が東京とSalt Lake Cityから来てくれたり、ベルリンに住んでいる姉が訪ねました。体は慌ただしかった1週間ですが、昔ながらの友人や家族と時間を過ごしながら、心はリラックスできたのではないかと思います!

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米国VC市場の成功の要因には何があるのでしょうか。最大の人材プール、絶えず起きる技術革新、大きな国内市場、莫大なキャピタル、どれも正解です。しかし、もう一つ見落としがちな要素があります。それは、VC業界に特化した様々なベンダー/サービス・プロバイダーです。

サービス・プロバイダーは、米国のベンチャー・キャピタル市場において重要な役割を担っています。ファンドの組成から日々の運用まで、ファンドのライフサイクルの各ステップにおいて進化を続けてきたサービス・プロバイダーが存在するのです。

AngelListは、ファンド組成と資金調達における革新を起こした最も有名な例です。米国のベンチャーキャピタル市場の重要な構成要素の一つとして、前例のないほど簡単な方法で何百人もの人々がAngelList上でファンドを立ち上げました。AngelListはこの分野のパイオニアですが、他にもたくさんのサービス・プロバイダーがあります。SydecarやAllocationsのようなプラットフォームは、VCが簡単にファンドを立ち上げることを支援するサービスプロバイダーとして、急速に成長しています。言うまでもなく、投資DAOではSyndicateは重要なインフラとして位置付けをしています。

また、資金調達プロセスを管理するためにDocSendやCapLinkedのようなサービスプロバイダを使用します。これらのプラットフォームは、VCがプレゼンテーション資料や他のドキュメントを簡単に管理することを可能にします。

ファンドを立ち上げた後は、ファンド運営が非常に重要な部分になります。AngelListやSydecarのような多くのファンド組成プラットフォームもこの部分をカバーしていますが、他にもファンド運用に特化したサービス・プロバイダーが多数あります。

おそらくCartaが最も有名なファンド運用ベンダーで、去年の資金調達では$7B(約1兆円)の評価を受けています。賛否両論はありますが、私たちの多くの投資先ファンドもCartaを利用しています。Aduro や Vector も急成長中のファンドアドミニストレーターの良い例です。RunditやARCH Labsのようなサービス・プロバイダーは、投資先企業・ファンドのデータ分析分野でVCをサポートします。

当然これらのサービス・プロバイダーは、米国のベンチャー・キャピタル市場の成長における唯一の原動力ではありません。しかし、彼らがいなければ、今までの成長曲線はこれまでよりも緩やかなものであったに違いないです。ですので、日本のベンチャー・キャピタル市場がさらに飛躍するためには、サービス・プロバイダーのイノベーションも不可欠だと思います。現段階では、日本において上記で述べたようなサービス・プロバイダーの種類はまだ少なく、提供されるサービスの内容も狭い、さらに悪いことに、その割にコストは高いと聞いています。

正確なデータはありませんが、従業員数あたりのAUMは、アメリカのVCより日本のVCの方が高いと思います。すなわち、同じAUMであれば、日本のVCの方が従業員が多いのではないかということです。生産性の向上の余地があるのです。

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