#201 なぜ日本にはファンド・オブ・ファンズがないのか。
先週は東京とソウルを訪問し、慌ただしい一週間を過ごしました。日本では1泊2日の短い滞在ながら、ミーティングでぎっしり詰まったスケジュールを無事にこなすことができました。
ソウルでは、前回ご案内した Emerging Manager Summit in Seoul 2024をナンマン・パートナーズの皆様や、多くの未来のGPの方々と共に成功裏に開催することができました。また、韓国のスタートアップシーンで長年重要な役割を果たしている スタートアップ・アライアンス主催の シリコンバレーの韓国人 2024にスピーカーとして招待され、業界内外の多くの方々の前でファンド・オブ・ファンズについてお話しする貴重な機会をいただきました。
さらに、起業家や弁護士、オペレーターなど、さまざまなバックグラウンドを持つスピーカーの皆様とのネットワーキングやディナーも大変楽しいひとときでした。声が枯れるほど忙しい日々でしたが、それ以上に充実感で満たされた素晴らしい一週間でした!
ファンド・オブ・ファンズについて発表させて頂きました(写真のソース:スタートアップ・アライアンス)
ファンド・オブ・ファンズは、プライベートエクイティやベンチャーキャピタル(VC)といったオルタナティブ資産クラスにおいて重要な役割を果たします。他のファンドに投資するファンドとして、投資家に多様で厳選された投資機会を提供します。特にアメリカでは、VC業界でもファンド・オブ・ファンズが広く活用されています。しかし、日本ではVCをターゲットとしたファンド・オブ・ファンズは見られません。なぜ日本ではこのような投資スキームが根付いていないのでしょうか。
その理由を理解するには、まずアメリカ市場におけるファンド・オブ・ファンズの役割を考える必要があります。第一に、アメリカのVCエコシステムは非常に規模が大きく、数千ものファンドが存在します。この膨大な選択肢の中から個々の投資家が最適な投資先を見つけるのは容易ではありません。ファンド・オブ・ファンズは、投資家に代わって数多くの選択肢から有望な投資機会を選別し、ガイドの役割を果たします。これは、海外旅行中に使うガイドブックのような存在に近いかもしれません。
第二に、VC業界ではファンド間のパフォーマンス格差が非常に大きいです。トップティアのファンドは優れたリターンを生み出しますが、下位のファンドはS&P 500のような伝統的な投資先のパフォーマンスにも及ばないことが多々あります。そのため、VC投資では上位ファンドへのアクセスが非常に重要であり、ファンド・オブ・ファンズはそのための専門知識とネットワークを提供します。これは、地元の名店を熟知している美食家のような役割を果たしていると言えるでしょう。
第三に、ファンド・オブ・ファンズは海外投資家のためのゲートウェイとしても機能します。アメリカ市場はアジア、ヨーロッパ、中東といった地域からの資本が多く流入しており、現地の投資環境に不慣れな海外投資家にとって重要な案内役となっています。知識とアクセスを駆使し、海外資本と適切な投資機会を結びつけることで、グローバルな資本誘致においても役割を果たしています。
では、なぜ日本ではVCをターゲットとしたファンド・オブ・ファンズが存在しないのでしょうか。その理由として、まず日本のVCエコシステムがアメリカに比べて規模が小さく、アクティブなファンドの数も限られている点が挙げられます。投資家にとって選択肢が少ない場合、仲介役としてのファンド・オブ・ファンズの必要性が低くなります。例えるなら、ガイドブックが必要ないほどレストランが少ない街のような状況です。また、たとえファンドの数が増えたとしても、上位の成績を出すファンドが少なければ、ファンド・オブ・ファンズの役割は限られます。さらに、日本のVC市場が海外投資家の関心を十分に集められていないことも、ファンド・オブ・ファンズが普及しない要因と考えられます。
とはいえ、日本市場は急速に変化しています。VCエコシステムが成長し、成熟が進む中で、ファンド・オブ・ファンズが活性化する可能性は十分にあります。いままで通りのファンドの数の増加、より優れた成果、そして海外からの関心の高まりが、この投資スキームの発展を促すでしょう。私はこれからが日本でもVCファンド・オブ・ファンズが重要な投資構造として定着すると思います。今はそのための重要なタイミングで、定着に貢献できるように引き続き頑張っていきたいと思います。
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