#212 デカコーン時代の到来
いま妻が出張中で、私が留守番をしているのですが、タイミング悪く体調を崩してしまいました。妻が頻繁に出張するわけでも、私がよく体調を崩すわけでもないのに、今回は本当に運が悪いです。体調が悪い中で子供と遊んだり、世話をするのはさすがにきついですが、幸いにもすごいタイミングで韓国とトロントから親と姉夫妻が来てくれているので、だいぶ助かっています。今回の記事も、子供の昼寝中に私もベッドで横になりながら書いているのですが、とにかく早く回復したいですね。しばらくはアセトアミノフェンに頼りながら、なんとか乗り切ろうと思います!
約10年前、「ユニコーン」という言葉がベンチャーキャピタル業界を席巻しました。未上場スタートアップが10億ドル($1B)以上の企業価値を認められることは、それほど珍しく、ほぼ成功の証のように見なされていました。2015年当時、ユニコーン企業はわずか50~60社程度しか存在せず、投資家たちはこれらのスタートアップが未来の技術やビジネスをどのように再編していくのか、大きな期待を寄せていました。
当時の私は、「50社という数字は多すぎるのではないか?」と疑問に思ったことを覚えています。未上場企業が10億ドル以上の価値を持つこと自体が珍しいことだと考え、一社ずつ調べてみたこともありました。しかし、今となってはそうした努力は無意味になりました。現在、ユニコーン企業の数は1,200~1,500社を超えており、データの出所によって異なるほど膨大になっています。かつて特別な存在を示す言葉だった「ユニコーン」は、今ではありふれたものになってしまいました。
最近お会いした、「アーリー」ステージ投資を中心とするベンチャーキャピタルファンドのゼネラルパートナー(GP)は、投資対象企業のバリュエーションを最大4億ドル($400M)まで見ていると話していました。アーリーステージ投資としては非常に高い水準です。でも、彼の主張はシンプルでした。もはやユニコーンを目指すだけでは不十分であり、真の機会をつかむにはデカコーン(Decacorn)、つまり企業価値100億ドル($10B)以上のスタートアップを育てる必要があるというのです。
その会話では、彼のこの戦略に同意できませんでした。しかし、よく考えてみると、一理あるとも思えました。現在、デカコーン企業はわずか50社程度しかありません。OpenAI、SpaceX、Databricks(今年IPO予定)、Revolut、Deelなどが代表例です。興味深いのは、この数字が10年前のユニコーン企業の数とほぼ同じであることです。つまり、今日のユニコーンは、10年前の企業価値1億ドルのスタートアップと同じような位置付けになっており、10年後にはデカコーン企業の数が現在のユニコーン企業並みに増える可能性があるということも言えるのです。
この変化は未上場市場だけにとどまりません。2015年以降、Amazon、Apple、Microsoft、Metaなどの時価総額はおおよそ10倍に成長しました。技術革新がこのペースで続く限り、デカコーン企業の増加も十分に予測できる流れといえます。
今、起業を目指している方々は、この点を注視すべきです。10億ドル企業をつくるだけでは、もはや成功を保証するものではありません。100億ドル規模の企業を目指すことで、初めて本当の差別化が可能になります。ベンチャーキャピタルファンドも同じです。ユニコーンレベルの企業に投資するだけでは、今後のイノベーション経済をリードするようなリターンを得ることは難しくなるかも知れません。
ユニコーンは昨日の目標です。今はデカコーン時代が到来しようとしています。
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