#79 VCから資金調達がしやすいスタートアップは?

VCが好むのは、中小企業ではなく、想像を絶する巨大なビジョンを持つスタートアップ
46(Youngrok) 2022.07.11
誰でも

先週は日本に行く機会があったのですが、ちょうど日本最大級スタートアップイベントであるIVS那覇があったので、初めて参加をしてみました。 体は疲れましたが、仲の良い友達や知人たちと久しぶりに楽しい時間が過ごせ、そして多くの新しい方々にも出会えた良い時間でした。 1,500人が参加したイベントだけに、スタートアップ界の100人を超える方々がボランティアとして参加したようですが、彼らの努力や犠牲がなかったら不可能だったイベントだったと思います。ありがとうございました!

IVS 2022 那覇

IVS 2022 那覇

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スタートアップを始めるハードルが下がるにつれ、より多くの人がスタートアップのエコシステムに飛び込んでいます。これは素晴らしいことです。スタートアップエコシステムは過去10年で大きく成長し、私たちの生活を劇的に変化させています。現在のマクロ環境は理想的とは言えないが、長期的にはエコシステムが成長し続けることは間違いないです。

しかし、スタートアップが増えるにつれ、スタートアップと中小企業を混同してきている人々もいるように見えます。まず、私が思う「中小企業」と「スタートアップ」の定義を整理させてください。

中小企業とは、ビジネスモデルがしっかりしている儲かるビジネスだが、必ずしも社会に爆発的なインパクトを与えるとは考えにくい会社です。例えば、フランスワインの輸入業などはビジネスモデルがしっかりしていて成功すれば儲かるけど、我々の生活が変わるほどのインパクトを作ることは殆どないでしょう。

一方でスタートアップは、必ずしもビジネスモデルがしっかりしてないかもしれないし、しばらくは儲からないかもしれないが、長期的には世界を変える可能性がある会社です。ウーバーやブロック(旧:Square)のようなスタートアップがどれだけ我々の生活を変えたのかを考えれば分かりやすいと思います。

結局、VCはホームランを狙うビジネスモデルです。つまり、VCは10件中9件がうまくいかなくても、たった1件の投資で100倍のリターンがあればOKなのです。ですから、大きなインパクトがある長期的なビジョンを持つことが非常に重要で、スタートアップの創業者は、「自分の会社が、社会の何をどのように変えることができるのか」を自問自答する必要があります。

誤解しないといけないところは、ビジョンというものは必ずしもTAM(Total Addressable Market、獲得可能な最大市場規模)のことではありません。もちろん、TAMは重要ですが、これはどちらかというと短期的なものです。スタートアップの最初の製品にすぐに市場があるかどうか、です。ビジョンとは、さらにTAMの先にその会社がどこに向かっているのか、ということに近いです。

先週、IVS那覇に行く機会がありました。ご存知の方が殆どだと思いますが、IVSは年に2回開催される日本最大級のスタートアップイベントで、そのフィナーレを飾るのが「Launch Pad」というスタートアップピッチイベントです。いくつかピッチを見たのですが、その中にはPetokotoというスタートアップも含まれていました。

同社を一言で言うと、プレミアムなドッグフードを販売する会社です。正直なところ、最初全く興味が持てませんでした。ただのドッグフード会社じゃん?中小企業としてやれば良いのに、VCの資金調達の対象にはならないな、と思ったのです。

ところが、創業者が会社の未来について語り始めたとき、違う空気を感じ始めました。彼は「ペットに関するさまざまな活動のためのインフラを構築するのが目標で、フードはその出発点に過ぎない」と言ったのです。星野屋という日本の有名ホテルチェーンとすでに提携を始めており、将来的には旅行、医療、保険、FinTechなどの事業にも裾野を広げていく予定だと。この時点で、この会社はもしかしたらかなり面白いことをやっているかもしれないと思い始めました。

ペット関連の医療、住宅、旅行、金融、保険などの事業をつなぐビジョンを持つPetokoto社(IVS那覇ランチパットのピッチ中)

ペット関連の医療、住宅、旅行、金融、保険などの事業をつなぐビジョンを持つPetokoto社(IVS那覇ランチパットのピッチ中)

そのビジョンをどう実行するかまでは話していません。もはや確かなプランはまだないかもしれません。でも、そんなことはどうでもいいのです。少なくとも彼は面白いビジョンを持っていてそれをピッチの中でうまく表現し、それが他の人の注目を集め、このスタートアップについてもっと知りたいと思わせたからです。決して私もこれで投資の判断ができたと言うわけではありません。でも、きちんとデューデリジェンスをしてみたいという気持ちになったわけなのです。驚くことなく、この会社はその日のコンテストで優勝を勝ち取りました。

つまり、よりクレイジーなアイデア、より大きなビジョンを持っているスタートアップほど、VCの資金調達の対象となりやすいです。VCの仕事は、会社のアイデアがクレイジーか否かではなく、アイデアがどれだけクレイジーか、そして創業者がそのアイデアを実現できるかどうか、を評価することなのです。

References:
・起業家の登竜門「IVS 2022 LAUNCHPAD NAHA」。勝利は、ペットが家族として愛される世界へ! ペットウェルネス企業「PETOKOTO」 - https://re-how.net/all/2054468/
・(YouTube) IVS2022 LAUNCHPAD NAHA(ランチャパッド ナハ) - https://youtu.be/-rhT0IMCTOo?t=10102

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