#115 シリコンバレーにおけるグループチャットの威力

誰も知らなくて誰もが知っている
46(Youngrok) 2023.03.20
誰でも

家の近所にRainbow Groceryという50年弱の歴史を持つスーパマーケットがあります。少し変わったところで、肉類は一切おいてなくて、基本的に地元のオーガニック野菜だけを仕入れたり、ブィーガン向けの食材が豊富にあります。ここは八丁味噌とかカクテキといったアメリカのスーパーでは想像できないものもバラうりをしているのですが、今回初めて勇気を出して少し買ってみました。アメリカで作った味噌やキムチなんて、と期待は低かったのですが、これが普通に結構美味しかったのです。これからはもう少し愛用する予定です!

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SVB事件の原因を考えるとき、SVBの財務状況、IRコミュニケーションの失敗、スタートアップという最もリスクの高い会社カテゴリーに対して銀行業を提供するという事業内容など、いろいろと深掘りできる原因はあります。

しかし、上記のようなSVPという会社における内在リスク(Intrinsic Risk)もありますが、外部環境にまつわるシステマティックリスク(Systematic Risk)も考える必要があります。そして、前回の記事でも触れたように、今回ソーシャルメディアやパブリックのメディアを使わずに、情報があっという間に拡散したことはとても興味深いと思っています。SVBから資金を引き出すよう投資先企業に指示を出した最初のVCとされるFounders Fundは、投資先企業にその旨を個別に伝えました。しかし、それから数時間後、スタートアップ界隈の誰もがこの状況を知ることになったのです。

ソーシャルメディアや公開オンライン・フォーラム(2chなど)が、大衆の集団行動を引き起こすというのはよくあることです。アメリカ版2chであるRedditを通じて、GameStop社が株式市場に前例のない影響を与えたことはまだ記憶に新しい出来ことです。また、数千人ものトランプ支持者がアメリカの国会議事堂(U.S. Capitol)を襲撃した時には、ツイッターは情報伝達手段として重要な役割を果たしました。

しかし、今回のSVBの出来事は違います。おそらくRedditやTwitterといった公開メディアではなく、プライベートな情報伝達チャンネルでしか情報が広まったもので、非常に大きなインパクトを残した最初の出来事だったのではないでしょうか。

それは具体的にどのように行われたのでしょうか?それは「グループ・チャット」です。アメリカではWhatsAppやテキストメッセージ(SMS)が広く使われるのですが、それらもラインのグループチャートのようなグループチャットができます。

私たちは皆、友人や家族、そして仕事でもグループチャットを使います。もちろん、スタートアップのファウンダーやVCも例外ではありません。むしろ、スタートアップのエコシステムでは、グループチャットはより強力です。スタートアップは未上場会社なので、情報は公開できません。VCの投資も公開されないことが多いです。そのため、多くのコミュニケーションはグループチャットのようなプライベートのチャンネルで行われています。

創業者たちは、他の創業者、VC、あるいはチームメンバーとグループチャットをします。そこで関連する情報を共有するのですが、その情報の中には機密性の高いものも少なくありません。しかし、繰り返しになりますが、それはお互いを知っている少人数のグループなのです。外のオンラインフォーラムやソーシャルメディアで出会う見知らぬ人たちではないので、彼らはここでの情報を信頼しやすいのです。もちろんその分集団思考にも陥りやすくなります。

さて、Founders Fundが30人のポートフォリオ会社の創業者にSVBから資金を引き出すように指示をしたとしましょう。各創業者はこれを、信頼できる他の5人と共有するグループチャットで共有します。この時点で150人がSVBからの引き出しについて知ることになります。そして、その人たちがまた5人のグループチャットでその情報を共有します。これで、750人がその情報を持つようになります。このプロセスが何度が繰り返すうちに、数時間以内にみんなが知るようになりました。

これは情報の受け手として、そして送り手としての2つの角度から考えることができます。受け手としては、このグループチャットという情報チャネルの恩恵を受けるために、適切な人たちとのグループチャットに入っていることが大事なことを意味します。今回、SVBを知ったのが一般のメディアが気づいた後では、すでに手遅れです。私もSVBを知ったのが比較的に早かった方だったと思いますが、もっと早く知っていればよかったと思います。

送り手としては、グループチャットで共有した情報は、より早く、より広範囲に拡散されるということを改めて認知しておく必要があるかもしれません。これを知るだけでも、グループチャットの情報をいかに戦略的に活用するかに役に立つかもしれません。

References:

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