#72 世界で一番大きな投資家は?そして彼らが最近投資を増やしているところは?

オルタナティブ投資への注目は年々高まってきている
46(Youngrok) 2022.05.23
誰でも

先週末はハワイ島にほぼ弾丸の旅行を行きました。サンフランシスコからだと先週出張で行ったボストンよりハワイの方が近いのです。ヤギなど、野生の動物がちらほらいて、派手な色をしているヤモリも何回かみつけたのですが、ハワイ語でMo’oと言われるこのヤモリは、縁起がよく幸運をもたらすとされてるようです。ハワイ神話に巨大なトカゲがでてくるらしいですが、それと関係してるとか。で、今週は皆さんに良いことがあることを願います!

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運用する投資残高が世界で最も大きいのは誰でしょうか。フィデリティ(Fidelity )、バンガード(Vanguard )、ゴールドマンサックス(Goldman Sachs)などの大手アセットマネジメント会社は、数百兆円以上の運用資産残高(AUM)を持ちます。その中で、ブラックロック(BlackRock)は、およそ900兆円にのぼる最大の資産運用残高を誇ります。

ところで、ここでアセットマネージャーとアセットオーナーの違いを理解する必要があります。ご想像の通り、アセットオーナーとは、実際に資産を所有する人のことです。言い換えれば、実際にお金をもっている人たちです。一方、アセットマネージャーは、アセットオーナーからお金を預かって、そのお金を運営してくれる存在です。

ブラックロックやゴールドマン・サックス、フィデリティはアセット・マネージャーです。彼らは自分たちのお金も運用しますが、あくまでもアセットマネージャーとして、アセットオーナーのお金を運用して手数料をもらうことを本業としています。ですので、彼らの運用資産残高が大きくても、彼ら自身が全部そのお金を持っているわけではないのです。

じゃ、そうしたら世界で最もお金が多い投資家、アセットオーナーは誰でしょうか。下の表は世界で最も大きいアセットオーナーの上位10を表していますが、実は、第1位は日本の年金基金なのです(正確にはGPIF、年金積立金管理運用独立行政法人)。200兆円に近い桁外れの規模を持つファンドなのです。上位10を見ると、国の年金基金か公的資金を運用するソブリンウェルスファンドです。要は国系ですね。

アセットオーナーの上位10位(Full Listは下記のReference参照)
アセットオーナーの上位10位(Full Listは下記のReference参照)

さて、日本の年金基金はどこに投資をしているのでしょうか。基本的には国内株式、国内債権、海外株式、海外債権に25%ずつを投資をしているのですが、一つ注目すべき点としては彼らのオルタナティブ投資へのアプローチです。

オルタナティブ投資の定義は以下の通りです:「オルタナティブ投資とは、上場株式や債券といった伝統的資産と呼ばれるもの以外の新しい投資対象や投資手法のことをいいます。オルタナティブ(alternative)は直訳すると「代わりの」「代替の」という意味です。具体的な投資対象としては、農産物・鉱物、不動産などの商品、未公開株や金融技術が駆使された先物、オプション、スワップなどの取引が挙げられます」(出典:SMBC日興証券)

いわゆるスタートアップ投資やベンチャーキャピタルファンドといった私の記事で主に扱っている投資も全て非伝統的資産として、オルタナティブ投資の範囲に入ります。

さて、日本の年金基金の話に戻りますと、下のチャートで著している通り彼らは年々このオルタナティブ投資の運用資産残高を高めてきています。2021年3月時点ですでに1兆3千億の投資残高が保有します。

GPIFの投資開始来のオルタナティブ資産の時価推移
GPIFの投資開始来のオルタナティブ資産の時価推移

ここでハイライトしたいポイントとしては、ベンチャーキャピタルを含むプライベートエクイティを表す「PE(一任運用&自家運用の両方)」の運用残高がわずか5年前である2017年はほぼなかったのに、今は600億円を越す水準まで上がってきているということです。このようなトレンドは日本のみならず他の国の年金基金でも起きているのです。

さらに言うと、これは他のアセットオーナーの中でも起きています。アメリカでは大学基金も大きな資産オーナーの一つですが、その中でも5兆円規模の資産を有する最も大きな大学基金であるハーバード大学はよりアグレッシブにPE投資を増やしてきています。

ハーバード大学のアセットアロケーションの変化
ハーバード大学のアセットアロケーションの変化

上記のテーブルが表している通り、PE(オレンジ色)の全体資産に対する割合が年々高まってきていることがわかります。

そうなんです、アセットオーナーたちはここ最近オルタナティブ投資を増やしてきているのです。

いわゆる投資のプロである彼らはこのように株式や債権だけでなく、オルタナティブ投資を通じてポートフォリオを多様化させつつ投資リターンを高めてきていますが、残念ながら個人投資家にとってはこのようなポートフォリオを組むことは殆どできてませんでした。

しかし最近その風向きが変わってきています。米国のCadreというスタートアップはより多くの個人投資家がプロの投資家にしかできない不動産投資ができるようなサービスを提供しています。日本でも、Lucaというスタートアップが個人投資家にオルタナティブ投資の機会を与えるサービスを作っています。

この流れは加速していきます。個人がより多様なオルタナ投資にアクセスを持つことはオプションではなく必ず必要なものだからです。株式市場が初めて出てきたとき、株式投資は誰もができるものではありませんでした。今は誰もがとても簡単に株式投資ができるようになっています。ですので、これからより多くのCadreやLucaみたいなスタートアップが出てくるのは必ず時間の問題でしょう。

References:
・Here Are the World’sBiggest Asset Owners - https://www.institutionalinvestor.com/article/b1p7flhqqcgq15/Here-Are-the-World-s-Biggest-Asset-Owners
・Worlds' Top Asset Management Firms - https://www.advratings.com/top-asset-management-firms 
・オルタナティブ資産の運用とは - https://www.gpif.go.jp/investment/alternative/ 
・Harvard's bet on alternative assets could pay off on a rainy day - https://www.bloomberg.com/professional/blog/harvards-bet-on-alternative-assets-could-pay-off-on-a-rainy-day/ 

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