#197 VCの手数料体系は妥当なものなのか

手数料体系にも変化が必要な時期が近づいているのかもしれない。
46(Youngrok) 2024.10.21
誰でも

先週は、東京に弾丸出張に行ったりと、バタバタと忙しい日々を過ごしました。一週間の締めくくりには、サンフランシスコを訪れている両親も一緒に家族全員で、初めて「Fort Point」に行ってきました。「Fort」は「砦」という意味があり、実際に昔は軍事施設として使われていたそうです。大きな大砲なども展示されていて、歴史を感じられます。さらに、そこから見えるゴールデンゲートブリッジの景色が本当に素晴らしいんです。ゴールデンゲートブリッジが建設されたのは約100年前ですが、Fort Pointはそれよりも前から存在していて、橋のデザインもこの砦に調和するように考えられたそうです。サンフランシスコに訪れる機会があれば、ぜひ立ち寄ってみてください!

Fort Point National Historic Siteの屋上から見上げたゴールデンゲートブリッジ

Fort Point National Historic Siteの屋上から見上げたゴールデンゲートブリッジ

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ベンチャーキャピタル(VC)業界では、これまで2~2.5%の管理報酬と20~30%の成功報酬(キャリー)が標準として定着してきました。一般的に2/20と呼ばれている報酬体系です。VCは最も人気のある投資資産群の一つであり、投資家(有限責任パートナーまたはLP)もこの条件を受け入れてきました。しかし、過去10年間でベンチャーキャピタルの環境は大きく変化しました。今や、このような報酬体系にも変化が必要な時期が近づいているのかもしれません。

最も大きな変化の1つは、VCファンドの規模が非常に大きくなったことです。 例えば、アンドリッセンホロウィッツアンドリーセン・ホロウィッツ(A16Z)の最新のファンドはなんと70億ドル(約1兆円)に達します。 このファンドに2%の管理手数料を適用すると、年間収益は約200億円になります。このように、大型VCは管理手数料だけでも相当な収益を上げ、今では投資成果だけに頼ることなく、売上をたてることができる構造になりました。

このような変化の中で、大型VCは今、「いかに10倍の収益を出すか」よりも「いかに安定的かつ継続的に3倍の収益を上げるか」に集中しています。 そのための努力の一つは、ポートフォリオのスタートアップを支援する専門家グループ、いわゆる「プラットフォームチーム」への多額の投資です。これらのチームは、コンサルタントのように投資先のスタートアップと緊密に協力し、出資先が潰れることなく、ファンドの最低限の成果を保証するために努力しています。

しかし、ファンド規模を大きくしてきた中型または大型ファンドの中には、プラットフォームチームのようなリソースを持たないところもあります。しかし、依然として同じ管理報酬を受け取っています。 彼らは果たして、増加した管理報酬をどのように正当化できるのでしょうか? ベンチャーキャピタル投資市場の競争が激化する中、この質問はますます重要になっています。

多くのLPは、ベンチャーキャピタルでお金を稼ぐことは決して簡単なことではなく、多くのファンドが実際は単に普通のパフォーマンスを出してることに気づき始めています。彼らは今、期待を下回るパフォーマンスに以前と同じような手数料を支払うことに満足していないかもしれません。

ベンチャーキャピタルのようなオルタナティブ投資資産群の中で、バイアウトファンドやヘッジファンドの歴史を見ると、ベンチャーキャピタルの将来を予測することができるかもしれません。これらの資産クラスでも、かつては2/20の手数料体系が当たり前でしたが、競争が激化し、投資家の要求が高まるにつれ、手数料は徐々に下がっています。 ベンチャーキャピタル業界も同じ道を歩む可能性があります。ベンチャーキャピタルのエコシステムがより成熟し、競争が激化するにつれて、2%の管理報酬が基本であった時代は終わりを告げるかもしれません。

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