#165 中東での資金調達

決して簡単ではない
46(Youngrok) 2024.03.04
誰でも

先週、シンガポールの出張を終えてドバイに行ってきました。ドバイに行くのは今回が初めてです。中東自体は2005年から2006年に徴兵中にイラクで7ヶ月ほど過ごしたことがあるので、中東を訪れるのは18年ぶりです。今回は短い日程でしたが、ブルジュ・ハリファとブルジュ・アル・アラブを目の前で見て感動するのには十分な時間でしたし、また、仕事的にもかなり濃い、忘れられない出張となりました。

海から見たブルジュ・アル・アラブ

海から見たブルジュ・アル・アラブ

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今回、ドバイに行くことにした理由は、そこで開催されるファミリーオフィス関連のカンファレンスにスピーカーとして招待されたからです。その前の週にどうせシンガポールに行く予定だったので、ドバイに一度立ち寄って、そこのファンドレイジングの状況を見るのも良い機会だと思いました。ドバイはシンガポールから近いわけではありませんが(6時間)、サンフランシスコよりははるかに近い(16時間!)ので、今行かないならいつ行くのかと思ったのです。

私が参加したパネルディスカッション

私が参加したパネルディスカッション

ここ数年、多くの投資家が中東で資金調達を行っています。おそらく最も注目すべき投資は、サウジアラビアのソフトバンク・ビジョン・ファンドへの投資でしょう。 サウジアラビアは2016年に450億ドル(現在の為替レートで約7兆円に近い、村田製作所の時価総額くらい)を投資しました。 それ以来、有名なベンチャーキャピタルやプライベート・エクイティ・ファンドもこの地域で資金を調達しています。アンドレセン・ホロウィッツのようなファンドがサウジアラビアで資本を調達するために多くの努力を注いだということは、フィナンシャルタイムズの記事などでもすでに言及されています。

中東地域のグローバル資本市場における影響力は急速に成長しており、特に彼らの政府系ファンド(ソブリン・ウエルス・ファンド)の存在感は無視できないレベルです。AUM基準で上位10のソブリン・ウエルス・ファンドのうち4つが中東のファンドです。サウジアラビアのPIF、アラブ首長国連邦のADIA、クウェートのKIAは特によく耳にする名前です。

このため、世界中の多くのファンドが中東で資金を調達しようとしています。実際今回のドバイ出張中に、中東でファンドレイジングをしようとするアメリカ、インド、イギリス、中国などのファンドに会いました。しかし、明らかな事実は、資金調達は決して簡単ではないということです。日本のことをよく知らない、日本語も話せない外国ファンドが突然日本に来て資金調達をしようとすると考えてみてください。中東も同じです。いくらお金が溢れても、ただ一度来てくれたからといって、いきなり投資してくれることはありません。

今回、海外ファンドの中で、中東で資金を調達しようと1年間ほぼ毎月そこを訪問したものの、結局一銭も調達できなかったという話を何度か聞きました。 また、アラブ首長国連邦の政府系ファンドの一つで働いていた方の中で、今はヨーロッパの他のファンドで働いているという方にも会いました。彼は明らかに中東の政府系ファンドの事情をよく知っているのですが、そんな彼でも、そこで資金を調達するのに1年かかったそうです。その間、多くの努力が注ぎ込んだのはいうまでもありません。1年に1回だけ中東を訪問して資金を調達しようとする人がいたら、「頑張ってください」としか言いようがないと思います。

また、何でもそうですが、急速な成長には必ず副作用が伴います。例えば、中東で資金を調達しようとする人たちを利用する詐欺師のような人もたくさんいるそうです。私も今回紹介を通じて王族と繋がりがあるという方に会いました。しかし、彼と話をし始めるとすぐに何か変な感じがしました。そこですぐにその人について裏を取ってみたところ、その人が言ったことのうち、いくつかの嘘がすぐに確認されたのです。

もちろん、ファンドは大きな努力なしに中東からの資金調達に成功しているところもあります。しかし、私はそのようなケースは非常に稀だと思います。そこから資金を調達しようとする人は、しっかりと準備をしなければならないでしょうし、なぜそこで資本を調達しなければならないのか、また調達できるのかについて良い答えを見出す必要があります。例えば、すでにファンドとして良いブランドを持っていて、今さらに大きな資金が必要であるとか(アンドリセン・ホロウィッツのような)、または中東の地域発展に役立つ投資計画を持っているとか、そういったものが一般的に合理的な答えになるでしょう。

今回仲良くなった中国からの投資家の方が王室にピッチしています

今回仲良くなった中国からの投資家の方が王室にピッチしています

結果的に、私は王族の方々と会う機会がありました。直接、GREEについて、そして私がマネージするアメリカのファンド・オブ・ファンズ、そして私自身を紹介する機会がありました。また、彼らと一緒に写真を撮ったり、握手もしました。 ここまで聞くと、何かが起きようとする感もしますが、正直すぐに何かが起こることは期待していません。私たちのファンドが中東から資金調達をすべきか、したいのか、などについてまずは考えてみることが先決かもしれません。

しかし、少なくとも今回の出張を通じて、このようなことを学び、経験したことは非常に大きな収穫であることは確かです。何はともあれ、中東は今とても魅力的な地域であり、お金もありますので、今後もウォッチしていくつもりです。

References:

Silicon Valley VCs tour Middle East in hunt for funding - https://www.ft.com/content/567ca518-b138-4273-bfe6-0712ef31e01d

Top 100 Largest Sovereign Wealth Fund Rankings by Total Assets - https://www.swfinstitute.org/fund-rankings/sovereign-wealth-fund

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