#98 今の中国の状況は、国内VCにとって良いチャンスとなり得るか?

米国や中国、他の国のVCと競争していく覚悟が必要
46(Youngrok) 2022.11.21
誰でも

先週はシンガポール出張に行ってきました。 サンフランシスコとシンガポールの間に幸い直行便はあるのですが、行くのに17時間、帰ってくるのに14時間かかる距離です。 着いたら雨まで降って昼ごはんを食べる時間がないほど忙しくて大変な出張ではありましたが、もともと知っていた方々との嬉しい再会や、良い新しい出会いもたくさんあり、また多くのことを学ぶことができた良い出張でした。 4年ぶりの訪問でしたが、もっと頻繁に行こうと思いました!

シンガポール オーチャード通り

シンガポール オーチャード通り

***

先週は、アジア最大級のプライベート・エクイティのカンファレンスであるAVCJのシンガポールに出席しました。中国やアジア各国からの多くの機関投資家と話す機会があったのですが、当然、話題の一つは、中国におけるプライベート・エクイティ・ファンド(バイアウトとベンチャー・キャピタルの両方)の資金調達環境が劇的に変化したことです。

ご存知のように、近年、米中間の政治的緊張は高まっており、それは近い将来に解決されるとは思えません。しかも、ゼロCOVID政策は中国経済に大きなマイナス影響を及ぼしている中、中国で3期目を迎える習近平氏は、これまでのように経済を最大速度で押し上げることよりも、中国の格差問題を解決することを優先しているようです。

こうした不透明感から、米国の大きな機関投資家から中国のファミリーオフィスに至るまで、さまざまな投資家が中国のプライベート・エクイティ・ファンドへの投資を敬遠しています。このため、超一流ファンドを除く、その他の多くの中国ファンドは、国内外の投資家から資金を集めるのに苦労しています。

それではそれらの資金はどこに向かうのでしょうか。中には、東南アジアの市場など、他のマーケットを探しているところもあるようで、日本のVCマーケットに興味があると言っているところもありました。

これは、日本のファンドにとっては当然嬉しいニュースです。多くのファンドが国外での資金調達を希望しているようですが、国内VCの殆どの投資家はまだ国内の投資家なのです。

最大の課題は、日本のVCファンドのリターンが、他の国のVCのパフォーマンスと比較して、十分に説得力がない可能性があることです。下の図は、米国ファンドと日本ファンドのリターン倍率の中央値を示したものです。ご覧のように、日本の方がリターンが低いことがわかります。

米国ファンドと日本ファンドのパフォーマンス比較

米国ファンドと日本ファンドのパフォーマンス比較

ベンチャーキャピタルという資産クラスは、いずれも最も高いリスクと高いリターンプロファイルを伴います。ですので、海外の投資家がリスクの高いVCに投資をするときには、彼らが投資しした株式や債権のような他の投資資産よりも高いリターンを期待します。また、彼らは、米国や中国、欧州のVCに資本を投入しており、同程度のリターンを期待しているはずです。中国のファンドのデータは見つからなかったが、リターン水準は米国のファンドと同じ水準だと聞いています。

今は日本のVCファンドにとっては、資金を調達し、世界にアピールする良い機会であることは間違いないと思います。しかし、それは今までリターンがより高かった他の国のVCと競争する覚悟は必要であることを意味します。海外の投資家はパフォーマンスにより敏感であり、競争は決して簡単ではなないでしょう。逆に競争できる準備ができたファンドにとっては、他の国内のVCと差をつける絶好のタイミングになるかもしれません。

References:
・PitchBook Benchmarks - https://pitchbook.com/news/reports/2022-pitchbook-benchmarks-as-of-q4-2021
・国内VCパフォーマンスベンチマーク4回調査行いました(2021年版)- https://jvca.jp/news/31149.html

無料で「46のテクトレ」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら