#209 創業もする前に行う投資

ますます前倒しされる初期投資
46(Youngrok) 2025.01.13
誰でも

私が住んでいるサンフランシスコのミッション地区にあるドロレス公園は、このサンフランシスコを代表するスポットの一つです。 観光ガイドブックに必ず登場する場所でもあり、地元の人たちにも愛されている場所でもあります。最近引っ越しをしたお陰で公園に近くなったので、今は軽いジョギングコースとして行くこともできるようになりました。ここは本当に素晴らしい景色を誇っているので、サンフランシスコに来たら、コーヒーやサンドイッチを一つ持ってドロレス公園でゆっくり景色を楽しむことをお勧めします!

先週の火曜日、仕事を終えてジョギング中に撮った写真。遠くにセールスフォースタワーを含むダウンタウンが見えます。

先週の火曜日、仕事を終えてジョギング中に撮った写真。遠くにセールスフォースタワーを含むダウンタウンが見えます。

***

ベンチャーキャピタル投資の競争が激化し、投資時期がどんどん早まっています。かつてはSeries A段階が主戦場であったのに対し、その後Seed段階、最近ではPre-Seed段階まで競争が激化しています。今は、スタートアップが誕生する前に創業者を発掘する「創業前段階(formation stage)」に関心が移っています。

競争が激化すると、投資機会が減るだけでなく、仮に投資をしたとしても、高いバリュエーションにより収益性が低下するリスクがあります。これを避けるために、投資家はますます早い段階に目を向けています。つまり、会社が設立される前から、優れたポテンシャルを持つ個人を発掘し、彼らが革新的な会社を設立するのを支援することに焦点を当てているのです。 例えば、OpenAIのシニアのエンジニアが起業を準備している場合、これは投資家にとって非常に有望なシグナルとなる可能性があります。

このモデルは、Sutter Hill Capitalが成功したインキュベーションモデルに似ていますが、重要な違いがあります。創業前段階の投資は、インキュベーションのように直接会社を設立したり、運営に深く関与するのではなく、創業者が独立して会社を設立できるように初期資本とガイダンスを提供するものです。 これは、多くのリソースと時間を必要とするインキュベーションよりも簡素化されたアプローチと言えます。

この戦略は確かに魅力的です。成功すれば、創業者と深い関係を築き、大きな可能性を秘めたスタートアップに、より低いバリュエーションで投資する機会を得ることができるからです。しかし、このモデルには「スケーラビリティ」という限界が存在します。創業者を発掘し、信頼関係を築くのに最低でも数ヶ月かかる可能性があり、その過程で創業に至らない可能性すらあります。

では、ベンチャーキャピタルはこの問題をどのように解決するのでしょうか。一部のVCは、ベンチャーパートナーやスカウトのような外部リソースを活用し、より多くの潜在的な創業者との接点を拡大しようとします。 しかし、より現実的で持続可能なアプローチは、創業前段階の投資をポートフォリオ戦略の一部として統合するハイブリッドモデルを採用することだと思います。これにより、創業前段階に集中しながら、他の段階の投資も並行して行うことで、リスクを分散させることができます。

今後、創業前段階の投資戦略がより注目されるようになれば、優れた潜在的な創業者を発掘し、支援できるファンドとそうでないファンドとの格差はますます大きくなるでしょう。 初期段階での投資成功の鍵は、現実的で持続可能な戦略を立て、創業者の旅の早い段階で有意義な関係を築くことができるかどうかにかかっている言えます。

References:

n/a

無料で「46のテクトレ」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

誰でも
#208 VCキャリア10年目、13軒目の新しい家から
誰でも
#207 米国資金調達の75%を握ったトップ30のVC
誰でも
#206 基本に宿る非凡さをどう見極めるか
誰でも
#205 米国のVC投資市場に飛び込む前に考えないといけないこと
誰でも
#204 不可能な夢の魅力
誰でも
#203 ベンチャーファンドはキャッシュフローの重要性を忘れがち
誰でも
#202 ソロGPのVCファンドも大丈夫な理由
誰でも
#201 なぜ日本にはファンド・オブ・ファンズがないのか。