#112 VCのお金の使い方によって我々社会の未来が決まっていく

これからは過去2年間の機会損失を挽回する時期
46(Youngrok) 2023.02.27
誰でも

カルフォルニアはワインが有名ですが、以前も話したことがある近所のStandard Deviantというサンフランシスコの有名なブリュワリーが地元ワイナリーと組んでワインビールを出しました。確かにビールとワインの味、両方がしてとても美味しかったです。他のブランドであれば日本にもワインビールはありそうな気もするので、もし機会があればぜひ試してみてください!

Standard Deviant Rose Saison

Standard Deviant Rose Saison

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家計を考える上で資本をどうやって配分していくか、つまりお金をどこにどうやって使うのかは当然とても重要です。それは、私たちの今の暮らしだけではなく、未来の形成に決定的な役割を果たしていきます。例えば、趣味にお金を使いすぎると、食べ物に使わないといけないお金が足りなくなるかもしれません。本当に必要かどうかを考えずに、周りが良いというものを全て買ってしまったら、本当に大切なものに使うお金がなくなってしまうかもしれません。

これは、家計のみならず、すべての経済単位で当てはまります。企業がどのようにお金を使うかは、その企業とそこで働く人々に何が起こるかを決めます。政府がどのようにお金を使うかは、その国やそこに住む人々に何が起こるかを決めます。さらにズームアウトすると、これは市場全体にも当てはまります。市場がどのようにお金を使うかは、私たちの社会とそこに住む人々に何が起こるかを決めていきます。

注目を浴びている有望な新興VCの一つであるSNRをリードするケビン・マハフィー氏は、「投資家や社会全体がどのように資本を配分するかを考えるとき、それは単に投資リターンを求める問題ではなく、道徳哲学の核心に触れるものである。資本配分は、現在(そして将来)何十億という人々がどのように人生を過ごすかに影響を与えるのです。」と話しています(SNRはGREE LP Fund USの出資先ファンドです)。

When we look at how investors and society, as a whole, allocate capital, it is not merely a question of seeking returns, but at the heart of moral philosophy. Capital allocation impacts how billions of people today (and even more in the future) spend their lives.

これはVCの仕事が究極的になんなのかを考えさせられる話で、我々社会においてベンチャーキャピタルがどのように資本を配分するかがいかに重要かを表します。彼らは、私たちの未来の社会、そして数億人、数十億人の生活を劇的に変えるかもしれない会社に投資をするのです。この仕事は、社会のあり方を変えていくものであって、金銭的なリターンは副産物に過ぎません。もし、VCがグーグル、アップル、セールスフォース、フェースブック、インスタグラム、ユーチューブ、ツイッタなどの会社に投資をしなかったら我々の社会はどうなったのでしょうか。きっと今とは全く違った姿をしているはずです。

資源というものは無限にあるわけではないので、常に機会損失を考えなければなりません。VCがA社に投資すると決めた場合、B社はVCから資金を調達する機会を失うかもしれません。しかし、実際に社会を良くし、人類の生産性を飛躍的に高めることができるのは、A社ではなくB社だとしたらどうでしょう。VCの選択によって人類はそれを成し遂げる機会を失ってしまいます。

2021年〜2022年のテックブーム期間中、多くのVCは高すぎるバリュエーションで多すぎる資金をスタートアップに注ぎ込みました。会社のファンダメンタルズではなく、人気とFOMO(Fear Of Missing Out)がVC投資の運転席に座って投資をリードしてきました。FTXやクラブハウスのような会社は良い例です。しかし、もしもこれらの会社に投下された莫大な資本の少しが他のことに使われていたらどうだったのでしょうか?例えば、パンデミックを乗り越えるまで命がけで働く最前線の医療従事者たちを支えるためにお金を使った方が、実は社会のためになったのではないでしょうか。あるいは、十分な人気がなく、FOMOを生み出せなかったために資金調達の機会を失った、しかし実際はより社会を良くする可能性の高かったかもしれない、ファンダメンタルズがしっかりしている会社にお金が回ったのであればどうだったのでしょうか?

この2、3年、VCは多くの機会費用を失いました。しかし、今はようやく多くが正常に戻りつつあります。VCは異常だった市場の雰囲気の二日酔いから立ち直り、再び重要な質問を投げ始めました。同時に、私も含めてですが、VCは自分たちの仕事が何であるかを再認識する時期です。より多くの実際に社会を良くし、人類の生産性を向上させる会社が資金を受ける時期なのです。

References:
・SNR 2022年下半期投資家向け報告書より(Kevin Mahaffey著)

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