#113 不景気の時、スタートアップのテクノロジー・ノベーションは止まるのか?

経済状況には関係なく、テクノロジー・イノベーションは続く
46(Youngrok) 2023.03.06
誰でも

アメリカには古い建物がたくさんあります。サンフランシスコにも築100年以上のお家なんかもよくありますが、古いからこそ感じられる魅力もあって、それをモダーンなやり方と合わせることで味のある建物に変身させます。アジアには残念ながらそのような建物が少ないと感じます。湿度が高いので木造の建物が長持しにくいのも原因だと言います。その中、先週東京で古い建物を最近改築したビルに行く機会があったのですが、とても素敵でした。今日の記事では宇宙とか話しますが、やはり昔のものが残せる能力、というのもとても大事ですね。

今サンフランシスコで売られている10億円相当の築95年の物件(<a href="https://www.redfin.com/CA/San-Francisco/214-Spruce-St-94118/home/1199141" target="_blank">リンク</a>)

今サンフランシスコで売られている10億円相当の築95年の物件(リンク

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先週は、東京にも行きましたが、ロスの老舗VCのUpfront Ventures(アップフロント・ベンチャーズ)のLP年次総会にも参加しました。このLP年次総会の後に開催されるUpfront Summit(アップフロント・サミット)は、ベンチャーキャピタル・テクノロジー業界では欠かせないイベントの1つで、ビジネス業界だけでなく、エンターテイメント業界から政治までのあらゆる著名なスピーカーたちが登壇します。例えば、去年の場合はパリス・ヒルト氏が、今年は元NBA選手のドウェイン・ウェイド氏が登壇しています。当社のあらゆる分野において幅広いリーチを持っていることがよく分かる一面です。

 LP年次総会は、今2代目として現在のアップフロントを率いているマーク・サスター氏によってキックオフされました。私を含む色々な業界の人たちは、ベテランVCの彼のインサイトに注目します。 プレゼンテーション中、マークは、AWSがスタートアップのシーンをどう変えたかについて話しました。10年前のAWSがない時代には、ビジネスを始めるのに50,000ドルくらいかかっていたのが、今はAWSなどの色々なツールやサービスによってそのコストが90%も下がりました。その過程で起業しやすい環境が整い、スタートアップが勃発的に増えましたし、その結果、様々なイノベーションが我々生活を劇的に変えてきました。そしてマークは、同じようなことがSpace Tech(スペーステック)でも起ころうとしていると話してます。

1kgを宇宙に送る際にかかるロケットごとの費用比較(参照:Wikipedia)

1kgを宇宙に送る際にかかるロケットごとの費用比較(参照:Wikipedia)

上のチャートのように、人類が1980年代にスペースシャトルで宇宙へ物を飛ばした時、1kgあたり54,500ドルかかっていたそうです。つまり、これは70kgの人を宇宙に送るには、3,815,000ドル(今の為替で約5億2千万円)かかっていたことを意味します。ところが、スペースX社のファルコン・ヘビーは、このコストをなんと1,400ドルにまで引き下げました。同じ70Kgの人を送るのにかかる費用はわずか98,000ドル、約1,300万円まで落ちたのです。なんと90%以上の下落で、AWSが起業のコストを減らした幅と似ています。すなわち、人類は今、これから本格的に始まる宇宙開拓時代の始まりを目の前にしているのかもしれません。

スペースシャトル(左)とファルコンヘビー(右)

スペースシャトル(左)とファルコンヘビー(右)

だからと言って、私がこの記事を通じて私たちみんながスペース・テックに取り組むべきだと主張しているわけではありません。実際、宇宙技術はフロンティア技術の中でもホットな分野の一つです。しかし、私たちの生活を大きく変えようとしている魅力的なテクノロジーは、他にもたくさんあります。合成生物技術は、食品、工業材料、医療など、私たちの生活の多くを変えるでしょう。ブロックチェーン技術も乱高下を繰り返しながら技術的により成熟していくと思います。AIは言うまでもないですね。私たちの生活のあらゆる場面ですでに人間の生産性をあげてきています。 つまり、技術革新に関しては、直近の「マクロ経済の動向」はあまり重要ではないのです。マクロ経済の状況が良くないからと言って、技術革新が止まるのでしょうか?または、その技術革新を主導する起業家たちは起業をやめるのでしょうか?マクロ経済の状況にかかわらず、技術革新は続き、起業家によって革新的なスタートアップは引き続き作られていくはずです。そして、それを継続的にサポートしていくのがVC投資家の役割です。

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