#68 スタートアップ投資はとても難しい

スタートアップへの投資には徹底した準備と覚悟が必要
46(Youngrok) 2022.04.25
誰でも

日本に来て早くももう2週間以上が経ちました。毎日のように昔からの友達や同僚、新しい方々にお会いしていて、体は疲れてきているもののとても楽しく過ごしています。日本もアメリカもお店や街には人々が溢れていて、状況はあまり変わらなくなっていると思いますが、一つ大きな違いは日本だと外でもみんなしっかりとマスクをしていることですね。以前友人から「日本ではマスクしてないとパンツ履いてないのと同じ感じだよ」と言われたのを実感しています。アメリカではお店の中でもマスクをしない場合が最近は多いです。日本でも少なくとも外ではもういいんじゃないかんと思いつつも、2年ぶりに人々に会えていることに感謝しています!

週末の渋谷

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私は「スタートアップ投資の民主化」の大ファンです。スタートアップ投資は大きな金銭的リターンを得る可能性があるだけでなく、次世代のイノベーションを牽引するスタートアップを支援するという観点からも、大きな意味を持ちます。ですので、より多くの一般の人々がスタートアップ投資を通じた未来を創るプロセスに一緒に参加し、貢献できるように、スタートアップ投資の民衆化はされていくべきだと信じています。

実際それは少しずつ実現に向けて動いています。より簡単にスタートアップへの投資ができるようなサービスが増えてきているからです。Indiegogoのようなクラウドファンディングのサービスは過去数年、大きな人気を博しています。AngelListのようなサービスは、エンジェル投資家に必要な様々なサービスを提供しています。Stonksは、この動きの最新の試みの一つで、スタートアップのデモデイをリモートで開催し、一般の人々がそのイベント参加・投資までできるようなサービスを展開しています。StonksにはAndreessen Horowitz(A16Z、アンドリーセンホロウィッツ)のような著名投資家も投資をしています。私も一度デモデイに参加したことがありますが、なかなか面白かったです。

ただし、スタートアップ投資は、引き続きとても難しいのです。

株への投資なら、証券口座を開いて、リストの中から気になる会社を選べば良いです。しかし、スタートアップは非公開会社なので、彼らの全体リストがどこかに公開されている訳ではありません。しかもいつも投資ができる訳でもありません。すなわち、ちょうど資金調達をしているスタートアップを自ら探しに行かないといけないのです。これを「ソーシング」と呼びます。ソーシングはプロのVCにとっても最も難しいステップの一つで、当然、殆どの人々はどこからスタートアップを探し始めれば良いのかはさえもわかりません。Stonksが注目を浴びている理由の一つも、ここにあります。単にデモデイに参加することで、簡単に資金調達を行なっている複数のスタートアップに出会うことができるのです。ただし、当然彼らが扱うスタートアップは、全体スタートアップのほんの一部にしかすぎず、投資家はそれぞれ自分達でソーシング戦略を考える必要があるのです。

じゃ、運が良く面白そうなスタートアップを見つけたとしましょう。次はそのスタートアップが本当に有望かどうかを評価する必要がありますが、これがまた大きなハードルです。また株への投資との比較ですが、上場会社は決算書などの重要な情報の開示が義務付けられているため、それら情報を簡単に入手することができます。具体的に何をやっているのか、ビジネスモデルはなんなのか、売上はどれくらいあるのか、キャッシュはどれくらいあるのか、などの重要な情報が公開されています。

しかし、スタートアップにはそのような開示要件はありません。アーリーであればあるほど、入手できる情報は少なくなります。ホームページの情報や、テッククランチなどのメディアで取り上げたことがある場合は、それら記事の情報に頼るしかありません。VCの場合はCEOや他の経営陣に直接話をしたりするので、状況は少しマシですが、基本的にスタートアップの評価に必要な情報は常に足りません。

より大事なのは、スタートアップ投資のプロであるVCの投資モデルは、すべての投資がうまくいくことではなく、一つのホームランを狙うことです。投資先の10%だけがうまくっても、VCは報われるようなモデルで、成績の良いVCと悪いVCを分ける基準は、誰がより成功率が高いのかになります。すなわち20%, 30%のポートフォリオがうまくいけば、成功したと呼ぶのです。

しかし、個人投資家としては、VCのようなポートフォリオを組むことは難しいです。一般的にVCは一つのファンドあたり20-40件の投資を行います。このレベルのポートフォリそを作りながら投資ができる一般投資家は殆どいないでしょう。

より多くの一般の人々がスタートアップ投資ができるようになった方が良いと強く考えるものの、現実的にはそれぞれの人々が投資活動を正しく行うことは決して容易ではありません。ソーシングや評価がスタートアップより比較的に簡単にできる株への投資も、投資家として成功することはとても難しいです。情報の非対称性が株への投資よりもはるかに高いスタートアップへの投資は、個人投資家にとってはさらに難易度が高いと言えます。ですので、直接スタートアップに投資をやりたい場合はきちんと勉強をして、ポートフォリオの構築ができるようにある程度資金も用意し、さらには自分なりの投資戦略・ソーシング戦略をたてて慎重に行うべきです。

References: 

・Stonks Demo Day 9 - https://stonks.com/dd/9-1

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