#85 WeWork創業者の480億円の資金調達は悪いニュースではない

保守的になっていはいけないスタートアップの夢
46(Youngrok) 2022.08.22
誰でも

先日生まれたばかりの赤ちゃんのためにSNOOというスマートベットを使っています。睡眠を誘導するためにホワイトノイズを出しながらベッドを揺らすのですが、赤ちゃんが起きそうになれば自動的に揺れを強くしたりホワイトノイズのボリュームを大きくしたりしてくれます。普通のベッドは使ったことがないので、直接の比較はできないのですが、すでに多少は役に立っているのではないかと(少なくともそう信じています!)。おむつはDTCスタートアップのCoterieというブランドを使っています。育児にも多くのスタートアップや技術があるようで、これからも色々な商品やサービスを使ってみたいと思います!

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先週シリコンバレーの大手フィンテック(FinTech)会社で働く友達とランチをしました。彼はその会社でプロダクト・マネージャーとして色々な新規事業開発のプロジェクトに携わっているのですが、明確に売上が出そうにないプロジェクトは全部潰されていて、その流れは最近より強くなったと言っていました。このようなストーリは彼が勤めている会社の話だけのものではありません。景気後退が懸念されつつテック企業の株価も大きく落ちている今、多くのテック企業がかなり保守的なスタンスを取りつつあります。

これはスタートアップも一緒です。セコイア(Sequoia)のような著名なVCたちは、この景気後退は数年も続く可能性があると警告しつつ、手元資金を維持し、ランウェイの伸ばすようにとアドバイスしています。

ごもっともなアドアイスですし、そうするべきです。ただし、だからと言って、スタートアップが掲げているビジョン、アイデア、夢のようなものまでに保守的になってはいけません。「会社をどう運営していくか」を保守的に考えることと、「将来どのような会社を作るのか」を保守的に考えることは、大きく異なることであって、決して混同してはいけないのです。

景気はシクリカルです。良かったり悪かったりするのです。スタートアップはそのようなマクロ状況に応じて、保守的に会社を運営すべき時もあれば、アグレッシブに会社を運営すべき時もあります。しかし、スタートアップが長期的にどこに向かいたいかはこの景気循環に邪魔されていはいけません。

前の記事である「#49「0→1」産業を見つけるVC」や「#79 VCから資金調達がしやすいスタートアップは」でも述べたように、ベンチャーキャピタル投資はハイリスク・ハイリターンな投資で、ホームラン・ビジネスです。つまり、特に最大のVC市場である米国では、多くの安打ではなく、数本のホームランを打つことに興味があります。ですので今のような環境下では、スタートアップは、VCに対して自分たちがどのように世界を変えていくかというストーリーを伝えつつ、そこに向かっていくための「保守的」な方法を示すべきです。

今週、WeWorkの創業者であるアダム・ノイマンの新しいスタートアップであるフロー(Flow)が、あの著名VCであるアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)を率いるマーク・アンドリーセン(Mark Andreessen)から$350M(約480億円)の資金を受けたというニュース話題になりました。

Left: Adam Neumann, co-founder of WeWork; right: Marc Andreessen, co-founder and general partner of Andreessen Horowitz.Photos: Angus Mordant; David Paul Morris/Bloomberg

Left: Adam Neumann, co-founder of WeWork; right: Marc Andreessen, co-founder and general partner of Andreessen Horowitz.Photos: Angus Mordant; David Paul Morris/Bloomberg

アダムはWeWork時代、問題のある私生活や会社経営(40歳の誕生日に60億円以上を使うなど)で悪名高く、この投資に関して批判する人もたくさん出てきました。

ただ、私個人としては、これはマイナスよりもプラスの影響の方が大きいと思います。確かに、アダムには悪い評判も多いです。WeCrashedというドラマがでたくらいです。しかし、同時に、彼がWeWorkを築き上げ、商業用不動産市場をディスラプトし、共有オフィスという新しい業種を作り上げたのも事実です。さらに、多くのスタートアップがWeWorkでさらに新しいイノベーションも起こしました。今WeWorkは上場していて、4,500億円以上の時価総額をもちます。ピーク時の時価総額は1兆円を超えていました。このような破壊的なビジネスをこのような規模で構築できる人がどれだけいるのでしょうか。

また、最近誰もが保守的になってきている中、これはVCやスタートアップのコミュニティに対して、全く非常識なクレージな投資が、まだ起こり得るというポジティブなシグナルを送ることができたと思います。アダムがWeWorkの経験から教訓を得たかどうかは分かりません。また、Flowがうまくいくかどうかも分かりません。しかし、少なくとも大きな夢を持ち、保守的にも積極的にも会社を運営できる創業者であれば、マクロ環境に関係なく、今後も引き続きイノベーションを作り上げるべきではないかと思います。

References:Andreessen Horowitz Thinks It’s Time for Adam Neumann to Build - https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-08-16/andreessen-horowitz-thinks-it-s-time-for-adam-neumann-to-build 

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