#65 スタートアップ投資、さらにアーリーを目指していく

段々とアーリーステージに向かう投資家たち
46(Youngrok) 2022.04.04
誰でも

先週も申し上げたように、サンフランシスコに人々が戻ってきています。 先週はディナーの約束もいくつかあって、また昼間にダウンタウンを歩くことがあったのですが、レストランにはマスクをしていない人たちでいっぱいで、また街中でも本当に多くの人たちが闊歩していました。 テンダーロインというホームレスの多い治安の悪い区域もサンフランシスコ市が今年中にきれいに整理するという噂もあり、活気を取り戻しているようで本当に嬉しかったです。 もう日本も海外入国者に対する隔離がなくなったし再び日本からたくさんの方々が来られると思いますが、これからまた色々な方々をサンフランシスコで直接お会いできるを楽しみにしています!って言いながら実は今週の水曜日から4月いっぱいは日本にいる予定です。まずは日本でお会いすることを楽しみにしています!:)

***

株式投資でも、不動産投資でも、暗号資産でも投資のルールは同じです。安いときに買って、高くなったら売る。スタートアップ投資も同じです。会社が安いときに買い、高くなったら売る、つまり、バリュエーションが安いときに買って、高くなった時、流動性イベントを通じて投資リターンを作ります。

ここ数年、ソフトバンクやタイガー・グローバルなど、多くの非伝統的なVC投資家がスタートアップ投資競争に参入し、ミッド・レイターステージのスタートアップや上場テック企業のバリュエーションが大きく上昇しました。

しかし、大きい上昇を超え、上昇しすぎたためにそれらのスタートアップ・テック企業のバリュエーションが急落し始めました。例えば米国最大の暗号資産取引所であるコインベースは前年同期比40%減、非上場企業のインスタカートも、前回の記事で紹介したように40%近くもバリュエーションを下げました。IPO市場ももう薔薇色ではありません。2022年第1四半期にIPOを果たした会社の数は過去3年間で最も少ないです。

それに伴い、当然それら会社への投資家も影響を受けています。ブルームバーグは、タイガー・グローバルのヘッジファンドが第1四半期に34%近くも下落したと報じました。

ここで投資の原則に立ち返ってみましょう。投資家は、今はバリュエーションが低く、今後高くなる可能性がある企業を見つける必要があります。そのためには今のような状況でどうすれば良いのでしょうか。答えは簡単です。もっとアーリーのスタートアップを狙えば良いのです。

底値合戦が始まりました。実はちょっと前から始まっていて、著名テックメディアであるThe Informationによると、タイガー・グローバルはミッド・レイターステージの投資からは手を引き、アーリーにより集中すると報じています。

実際、最もアーリーなラウンドであるプレシード/シードラウンドは今の所減速する気配がありません。下のチャートが示すように、シード案件の資金調達額は去年同期間を上回っています。実際に私も周りのVCからシードラウンドはまだまだかなりホットであることを今もよく聞いています。

ただ、これからどんどんとお金と投資家が集まれば、ミッド・レイターステージで起きたような、多くの資金の流入とそれによる高すぎるバリュエーションがつくようなことが、シードステージでも起きる可能性が出てきます。必然的にさらにアーリーに行く必要が出てくるのは時間の問題かもしれません。じゃ、次の目的地はアクセラレーターやベンチャ・スタジオです。

ベンチャー・スタジオは、スタートアップの工場のようなものです。彼らは共同ファウンダーとして、アイデアしかない創業者と一緒に会社を作りながら、法務、オペレーション、ITなどのバックエンド業務を提供します。このバックエンド業務はそのスタジオに属している他のスタートアップと共有されるリソースで、例えばホームページ作りや法人立ち上げなど、どのスタートアップでも必要な業務をカバーし、ファウンダーは自分のアイディアのエグゼキューションだけに集中できるようになります。例えば、ニューヨークに拠点を持つベターワークス(Betaworks)はベンチャー・スタジオの良い例で、UnsplashGiphyAnchorといった成功した企業を生み出しています。

実は最近、ベンチャー・スタジオやアクセラレータがどんどん盛んになってきています。ODXはオンデック(OnDeck)フェローシッププログラムの新しいアクセラレータプログラムです。Hyperもプロダクト・ハント(Product Hunt)のCEOであるジョシュ・バックリー氏(Josh Buckley)などが設立した新しいアクセラレータプログラムです。セコイア(Sequoia)も、ロングテールのファウンダーを獲得するために、Arcというアクセラレータープログラムをヨーロッパで開始しました。UBERの共同創業者であるガレット・キャンプ氏(Garrett Camp)が設立したベンチャースタジオExpaは、最近2億ドルを調達したばかりで、リストはまだまだ続きます。

YC、500 Startups、Techstarsのような昔ながらのアクセラレータの評判は少なくとも米国では低下してきています(海外では好調のようです)。しかし、上で共有したような次世代の新しいプログラムが次から次へと生まれたり、拡大してきていて、投資家としてスタートアップが最も安い時に投資できる仕組みは増えてきています。

これはファウンダーにとっても嬉しいニュースです。資金調達の選択幅がさらに増えたからです。 つまり、この流れは、より早いステージから投資したい投資家側のニーズと、より多様な資金調達の方法を必要とする創業者側の両方のニーズを満たしています。これからベンチャー投資の領域においてベンチャー・スタジオやアクセラレーターのようなさらにアーリーに行くアプローチが増えていきながら影響力を増していくことは想像し難いことではないです。

References:
・Tiger Global’s Hedge Fund Sinks 34% This Year as Key Stocks Fall - https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-04-01/tiger-global-s-hedge-fund-sinks-34-this-year-as-key-stocks-fall 
・Tiger Global, D1 Capital Signal Pullback From Big Private Tech Deals Amid Market Rout - https://www.theinformation.com/articles/tiger-global-d1-capital-signal-pullback-from-big-private-tech-deals-amid-market-rout?rc=6eiuc8

無料で「46のテクトレ」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら