#137 シードVCのリターンがゼロになる瞬間

最近のマクロ環境とウォーターフォールの落とし穴
46(Youngrok) 2023.08.21
誰でも

先週末は姉の結婚式の披露宴がトロントでありました。姉の旦那がトロント出身で、この前韓国で開いた結婚式とは別途、カナダに住んでいる家族や友人、親戚たちを招待したパーティーでした。向こうはドイツ系の方々で、すでに日本と韓国が混ざっている私たち家族ともかなり違うカルチャーの人々で、非常に楽しい時間が過ごせました。今週は私たち家族全員で旅行に行く予定です。それもまた楽しみにしています!

披露宴会場のAngus Glen Golf Club

披露宴会場のAngus Glen Golf Club

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アメリカVC投資では、スタートアップにエグジットイベントがあるとき、誰がどの順番で分配金を受け取るかを決めるときに「ウォーターフォール」という概念を使います。

このウォーターフォールでは一般的に後から入ってきた投資家がより高い優先順位を持ちます。 例えば、シリーズCの投資家が最初に投資金を回収し、次にシリーズBの投資家が投資金を回収し、そしてシリーズAの投資家とシード投資家が投資金を回収するという具合です。あくまでも説明のためにあるスタートアップが次のように資金を調達したというケースを挙げてみましょう:

  • シードラウンド: $10mのバリュエーションで$2mを調達

  • シリーズAラウンド: $50mのバリュエーションで$10mを調達

  • シリーズBラウンド: $100mのバリュエーションで$30mを調達

  • シリーズCラウンド: $200mのバリュエーションで$50mを調達

このような状況で、このスタートアップが$500mで買収されたとします。 最初はシリーズCの投資家が$125m ($50m x 2.5倍)、次にシリーズBの投資家が$150m ($30m x 5倍)、次にシリーズAの投資家が$100m ($10m x 10倍)、そして最後にシード投資家が$100m ($2m x 50倍)を受け取ることになります(この計算は多くの前提を無視した極めに単純な例に過ぎないことを改めてお知らせします)。

しかし、近年、ベンチャー市場が冷え込み、特にレータステージのスタートアップが資金を調達することは益々難しくなっています。より高い売上や利益など、スタートアップは以前よりもはるかに高い要求条件が求められています。

しかし、まだ安定したキャッシュフローを確保できず、現金保有が限られているレータステージのスタートアップも多いです。彼らは資金調達環境と関係なく、生き残るためにはなんとかして資金調達をしなければなりません。以前の資金調達ラウンドよりも低いバリュエーションで資金調達を行うダウンラウンドなど、決してスタートアップにとって有利な条件でなくても資金調達をしなければならないのです。

上記のケースの違う結果として、同スタートアップが泣く泣く以下のようなダウンラウンドで資金を調達したとしましょう:

  • シリーズDラウンド: $100mのバリュエーションで$50mを調達

そして翌年、この会社は$200mで買収されたとします。この場合、ウォーターフォールは以下のようになります:

  • シリーズD投資家の回収額:$100m ($50m x 2倍)

  • シリーズC投資家の回収額:$50m ($50m x 1倍)

  • シリーズB投資家の回収額:$50m ($30 x 2倍 - $10m)

  • シリーズA投資家の回収額: $0

  • シード投資家の回収額: $0

このケースのように、かなりのダウンラウンドを経験し、低いバリュエーションで買収された場合、初期段階の投資家は何の利益も得ることができません。ここでは説明を簡素化するためにLiquidation Preferenceというタームを説明に入れなかったのですが、そういうタームまで取り入れると状況はより深刻になります。繰り返しになりますが、現在多くの後期段階のスタートアップは資金調達に苦労しているため、ダウンラウンドを含むこのような形の資金調達が今後増えていきます。

当然これは初期段階のVCにとっては喜ばしいことではありません。ただし、私はまだ希望があると考えていて、有能な初期段階の投資家はあまり心配する必要はないと思います。

米国でのVC投資はホームランビジネスです。初期段階のVCは多くのヒットが必要ではなく、1つまたは2つの大きなホームランが必要です。それだけでも投資資金をすべて回収することができます(ファンドサイズが非常に大きい場合は難しいですが)。すべてのVCはポートフォリオ戦略に沿ったポートフォリオを構成します。ダウンラウンドなどで可能性が低くなった投資先があっても、ホームランの可能性がある別の投資案件があるということです。

また、ダウンラウンドを経験したスタートアップの中でも、もう少し時間と資本が必要な成長性の高いレータステージのスタートアップもたくさんあります。このようなスタートアップは、最終的にはホームランになる可能性もあります。Uberはかなりの規模のダウンラウンドを経験しましたが、それでも初期段階の投資家にとっては成功した投資となったのもこのような理由です。

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