#166 アセットマネジメント会社としてのVC

魅力的すぎる管理報酬
46(Youngrok) 2024.03.11
誰でも

先週初めてアップルのビジョンプロをちゃんと使ってみました。 発売直後に姉妹ファンドのGFRFundが購入したビジョンプロがオフィスにあったのですが、眼鏡だと使えなかったので結局諦めたのです。剣道をする時だけコンタクトをつけるので、その日に合わせてやっとテストしたのですが、やはり今持っているオキュラスより画質も良く、またコントローラーがない点は新鮮でした。ただ、まだかなり重いし、今の値段は現実的ではないので、買いたいという気持ちは芽生えませんでした。これからもっと軽くなって、コンテンツももっと多くなって(多分今回購入するほとんどの人がコンテンツの開発者ではないかと)、また価格ももう少し安くなったら、その時は購入を検討するかもしれないという気はしました!

姉妹ファンドのGFRFundが購入したビジョンプロ

姉妹ファンドのGFRFundが購入したビジョンプロ

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先週の水曜日、アンドリーセン・ホロウィッツが直近のファンドで70億ドルを資金調達したという記事が出ました。これは今の為替レートで約1兆円に相当する非常に大きな金額です。2022年にはレイトステージファンド、クリプトファンド、バイオファンドなどを含めて100億ドル(約1.5兆円)以上を調達したため、本人たちはそれに比べると満足できてないかもしれません。しかし、ファンドレイジングが難しい今の市場状況を考えると、70億ドルは非常に大きな成果です。

理想ではない市場状況にもかかわらず、莫大な資本を調達したのは彼らだけではありません。 例えば、同じく先週はTwitterやAffirmなどのスタートアップにレイトステージの投資を行ったVCであるSpark Capitalも23億ドル(約3,400億円)を調達したと発表しました。やはり良いブランドを持つ大型VCは、より大きくなることはなくても、継続して大きな規模を維持していきます。

VCが主流の資産群になるにつれて(#161 メインストリームのアセットクラスになったVC)、私は大型ファンドのビジネスモデルも伝統的なベンチャーキャピタルモデルからアセットマネジメントの業態に近い形に変化して行くと思います。 いわゆるキャリー、つまり投資成功報酬以外に、VCのもう一つの収益源は管理報酬(Management Fee)です。通常、ファンド総額の2~2.5%程度を毎年請求します。アンドリーセン・ホロウィッツが2022年から組成したファンドだけを考慮しても、全てのファンドの規模は約200億ドルとなり、これは年間管理報酬の収入が4億ドルになるということになります。 つまり、年間580億円程度の売上です!時間が経つにつれて管理報酬のパーセンテージは減少しますが、2022年以前にも多くのファンドを立ち上げているため、実際の総売上高はもっと大きいはずです。

通常VCを運営する上で最も大きな費用項目は人件費であり、P/Lの中で絶対的に最も大きな部分を占めています。LinkedInによると、アンドリーセン・ホロウィッツに関連する従業員は約600人だそうです。 したがって、単純計算してみると、1人当たりの売り上げは約65万ドル(約9,500万円)程度です。パートナーが受け取る金額はこれより高いでしょうから、この金額は必ずしも大きな金額ではありませんが、この数字自体が非常に保守的に計算した結果であり、パートナー級以外の社員には十分なモチベーションを与えることができるほどの水準です。

Spark Capitalの状況はもっとすごいです。LinkedInによると、スパーク・キャピタルに関連する従業員は47人しかいません。23億ドルと2%の管理手数料で計算すると、従業員一人当たり毎年100万ドルの収入を上げているという計算になります。 なんと約1.5億円です。

実際、プライベートエクイティ業界の上場している大型資産運用会社の場合、管理報酬が全体の収益の大部分を占めています。ブラックストーンの管理・アドバイザリーフィーの収益は、インセンティブフィーの約10倍にもなります。Stepstoneも同様の状況で、収益の大部分は管理・アドバイザリーフィーから発生しています。

Blackstone の最新10Kより

Blackstone の最新10Kより

特定の資産群が主流になることで収益構造が変わるのは、もしかしたら当たり前のことかもしれません。そして、少なくとも規模が大きくなっているVCファンドの場合、今その領域に入りつつあるようです。もちろん、これらのファンドに対する投資家の期待は、アーリステージの投資でアルファを追求する小規模VCとは異なります。もちろん、どちらが正解ということはありませんが、VCとして、自分たちがどちらのパスを追求するかを決めておかないと、今後それぞれのパスに必要な競争優位性も作ることが難しくなると思います。

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