#96 資産形成が難しくなった貧しい若い世代

今の若い世代は最貧困世代とも言われます。残念ながら、長期的な資産形成の観点からはその通りです。不動産をはじめ、あらゆるものの価値が所得水準の上昇をはるかに上回るスピードで高くなってきたのです。

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次のチャートは、1984年から2021年までの米国における住宅価格と所得の中央値の推移を表していますが、所得水準が27％くらい上昇したのに対し、住宅価格はなんと370％以上（！）も上昇しています。

実は、不動産だけでなく、消費者物価全体に同じことが起きています。下のチャートは、CPI（消費者物価指数）と、同時期の所得の中央値を示していますが、CPIも160%上昇しているのです。所得水準より上げ幅が遥かに大きいです。

30代後半である私の親の世代は、家を購入することで資産を形成することができました。しかし、所得水準と住宅価格の差がだんだんと大きくなってきていて、家の購入で資産を形成することが益々難しくなってきているのです。すなわち、長期的な資産形成のためには、別の方法が必要なのです。

幸いにも今の若い世代も不動産を使った資産が築けるよう、活発にイノベーションが進んでいます。例えば、レント・トゥー・オウン（Rent-to-Own、家賃を払うことで所有権を増やす）やフラクショナル・オーナーシップ（共同所有）といったコンセプトが人気を集めているのです。Divvy Homesのようなスタートアップはレント・トゥー・オウン市場を開拓していて、Pacasoのようなスタートアップはバケーションレンタル住宅市場のフラクショナル・オーナーシップ市場をリードしています。これらの企業の評価額はそれぞれ17億4000万ドル（約2,500億円）、15億ドル（約2,200億円）にものぼります。

他のオルタナティブ投資資産クラスも上昇しています。アート、ワイン、NFT、スニーカーなど、どれも新しい資産形成の方法です。実際、アートは若い世代に注目されていて、市場規模が大幅に伸びている資産クラスの1つです。

しかし、これだけでは不十分です。若い世代が長期的な資産を形成できるようにより選択幅を増やす必要があり、私はベンチャーキャピタル投資もそのひとつになると思います。スタートアップというのはもはや今の社会において不慣れなものでもなく、スタートアップへの投資に興味を持つ人はますます増えています。ベンチャーキャピタルへの投資は、リスクが高いのも事実です。しかし、例えば、ベンチャーキャピタルファンドに投資することで、潜在的なリスクを大幅に軽減しつつ、高いリターンを期待することもできます。

アメリカではすでにこのような動きが活発になってきています。より多くの人たちがベンチャーキャピタルへの投資をやり始めています。私自身のベンチャーキャピタルのファンド・オブ・ファンズのファンドマネージャーとしての仕事が、今後より多くの人々にとって長期的な資産形成のための選択肢として活用できるように貢献していきたいと思います。

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References:

・Real Estate 3.0 – The Ownership Revolution - https://www.nfx.com/post/real-estate-3-proptech-the-ownership-revolution 

・Real Median Household Income in the United States - https://fred.stlouisfed.org/series/MEHOINUSA672N 

・Median Sales Price of Houses Sold for the United States - https://fred.stlouisfed.org/series/MSPUS 

・Consumer Price Index - https://www.minneapolisfed.org/about-us/monetary-policy/inflation-calculator/consumer-price-index-1913- 

・Investing in the Art Market: A $1.7 Trillion Asset Class - https://caia.org/blog/2021/07/22/investing-art-market-17-trillion-asset-class