#61 激化するVCの投資競争、生き残るVCは誰?

タイガー・グローバルのアーリーステージ投資の拡大及びVC業界への影響
46(Youngrok) 2022.03.07
誰でも

先週は投資先ファンドの一つであるUpfront Venturesの恒例年次イベントであるUpfront Summitへの参加のためにロスに行ってきました。コロナにより去年は開催が見送られ、今年も元々は1月に予定されていたものが、オミクロンにより3月開催になりました。待った分、とても良い時間が過ごせたのですが、色々と水準の高いパネルディスカッションに加え、元々の知り合いや新しい方々ともお会いできた有意義な時間でした。投資家じゃなくても参加できるイベントですので(参加費はかかる)もしご興味ある方々は是非とも来年はチェックしてみてください。しかしサンフランシスコも天気は良いですが、ロスには比べられないですね!:) 

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先日、タイガー・グローバル・マネジメント(Tiger Global Management)が昨年末からの株式市場の低迷を受け、今まで積極的にやっていたレイターステージのスタートアップへの大型投資を縮小すると、テクノロジーに特化した著名メディアであるThe Informationが報じました。その代わりタイガーは、株価が下がっている上場テック企業により焦点を当てつつ、アーリーステージのスタートアップへの投資を増やすとのことです。

タイガーは上場市場と非上場市場の両方に投資する最も影響力のあるクロスオーバー投資会社の一つです。クロスオーバーとは、アマゾンのような上場企業だけでなく、まだ上場していないスタートアップ企業にも投資するような投資ファームの形態です。タイガーは今まで特にレイターステージのスタートアップに力を入れてきていて、昨年は最も多くの資金をスタートアップに投資をした投資家でもあります。彼らについては、過去の記事で詳しく紹介しています:#17 毎日数十億円を投資するベンチャーキャピタルファンド

クロスオーバーである彼らの専門性を考えると、上場企業に軸足を移すのは当然といえば当然です。ヘッジファンドのルーツを持っていて、上場市場での投資経験は豊富です。今後も上場市場でも無理なく投資が継続できるのは想像し難くありません。

一方で、アーリーステージ企業へのシフトは、VC業界において非常に重要な意味を持っています。つまり、シリーズAやBといったアーリーステージに投資する多くのVCが、これからはタイガーとの競争から免れなくなるのです。

タイガーが持つ最大の強みの一つは「莫大な資本の量」です。誰よりも早く、高いバリュエーションで、大きな金額を投資します。これはスタートアップにとってとても良い条件になります。さらに重要なことは、タイガーはこのモデルがワークすることをここ数年証明してきたことです。彼らは先月最大級ファンドである$11B(約1.3兆円)のファンドも組成しました。

従って、タイガーに対抗するためには、従来のVCも同様の能力及び規模を持つ必要があります。セコイア・キャピタル(Sequoia Capital)、アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)、ジェネラル・カタリスト(General Catalyst)、コースラ・ベンチャーズ(Khosla Ventures)、ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ(Lightspeed Venture Partners)などの著名VCは、規模を増やすなど機関投資家化を図ってきており、タイガーなどのクロスオーバー投資家とも競争できるポジショニングを作ってきています。しかし、このような新しいVCのマクロ環境にまだ準備ができてないVCも多くあります。自らの競争力を維持しつつ勝ち残るためのユニークな戦略を練らない限り、彼らが中長期的に生き残ることは段々と難しくなるでしょう。

ここで、タイガーはアーリーステージの投資ができないだろうと言う人もいます。レイターステージとは違って、アーリーステージの場合、投資先へのハンズオン支援が重要になるからです。確かにタイガーは伝統的なVCよりこの観点いおける専門性は欠けるかも知れません。しかし、私はこれは問題にならないと考えています。上でも話したように、彼らの最も強い武器は資金力であり、それだけでも十分に競争力を持てるからです。例えば、スタートアップからすればタイガーに加えて、スタートアップ経営に詳しい他の投資家を追加で入れればいいのです。実際、Pitchbookのデータによると、タイガーの一件あたりの平均投資金額は昨年を通して減少している一方で、ディールの数は増加しています。このことは、タイガーにとってアーリーステージへの投資は決して新しいことではなく、過去1年以上にかけて、徐々にその経験を積んできていることを示唆しています。

タイガーの投資件数及び一件当たりの平均投資金額
タイガーの投資件数及び一件当たりの平均投資金額

VCマーケットでは二極化が進んでいます。片方ではタイガーのような投資会社の登場及びVCの大型化が進んでいる一方で、もう片方ではプレシード/シードステージの案件をカバーする小規模なマイクロ/ナノファンドが台頭しています。今どちらにも属さないVCは、自分達はどの陣営で勝てるのか早急に決め、必要は投資戦略を立て、投資活動を行う必要があります。

References
・Tiger Global, D1 Capital Signal Pullback From Big Private Tech Deals Amid Market Rout - https://www.theinformation.com/articles/tiger-global-d1-capital-signal-pullback-from-big-private-tech-deals-amid-market-rout?rc=6eiuc8
・Tiger Global Raises $11 Billion for Latest Private Fund  - https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-02-04/tiger-global-raises-11-billion-for-latest-private-fund

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