#109 3倍のリターンを出すVCファンド

多くは3倍リターンが出せないため、優秀なVCを見つけることが鍵
46(Youngrok) 2023.02.06
誰でも

アメリカにはナニーシェアというのがあります。要は一人のベビーシッターさんに二人の子供をみてもらうというものですが、私たちも先月から他の家族とこのナニーシェアをはじめました。私たちからすると私たちだけで雇うよりは安くなりますし、ベビーシッターさんからすると時給が上がるのでWin-Winです。子供にとっても一人よりは二人でいた方が社会性も上がるみたいで、子供にとっても良いですね。子育てこそ毎日新体験ですね!

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VCとして10年で3倍のリターンが出せたら見事だと言えます。もちろん、そのようなVCに投資をする私みたいな人からするともっと高い数字が欲しいところですが(そのようなファンドも実際に存在するため)、3倍というのは良いターゲットになります。しかし、3倍でもそのレベルのリターンを出すのは思うよりも相当難しいのです。

まず、ファンドの規模と実際の「投資可能」な資金には違いがあることを理解する必要があります。例えば、100億円のファンドがあるとします。このファンドは、ファンドを運用するファンドマネージャー(いわゆるベンチャーキャピタリスト)に給料やファンドの会計をみてくれる会計士への支払い、その他にもオフィスの賃貸などを払う必要がなるなど、かなりの費用がかかります。通常、この費用は30%程度です。つまり、100億円のうち3割の30億円は、10年間費用として消えていき、実際に投資に使われるのは70億円程度になります。

すなわち、ファンドとして3倍のリターンを得るためには、実際の投資リターンは3倍より高くないといけなくなるのです。投資した分の70億円が3倍になったとしても、それは210億円であって、ファンドで見るとリターンは2.1倍にすぎないのです。つまり、ファンドレベルで3倍のリターンを作るためには、投資金額である70億円が約4.3倍(70億円 x 4.3 = 300億円)にならないといけないのです。

当然これは簡単なことではありません。利率で考えると、このレベルのリターンを得るためには、10年間の複利運用で毎年約15.5%のリターンを上げなければなりません。

さて、先のVCファンドの例に戻ると、そのファンドが35社に2億円ずつ投資をしたと想定しましょう。ここで、その中の1社への投資がホームランになり、30倍のリターンの投資になったとします。これは素晴らしいニュースです。しかし、喜ぶには少し早すぎます。2億円の30倍は60億円です。ファンドの規模が100億円であることを忘れてはいけません。今、このこのファンドはやっと0.6倍のリターンが出せたことにすぎません。あと同じようなホームランが4本も必要です。

OpenAIのDall-Eを使ってHappy VCとSad VCについて描いた油絵

OpenAIのDall-Eを使ってHappy VCとSad VCについて描いた油絵

現実には、100億円のファンドが2億円ずつ35社に投資するというのは戦略を持つところはありません。ファンドによって、投資件数や投資額も様々です。また、勝ち組のポートフォリオ会社へのフォローオン投資にはリザーブという概念もあり、ファンドによってリザーブの考え方もまちまちです。

ただ、ポイントは殆どの場合、どういう戦略にしてもVCファンドが3倍のリターンを得るためには、1本の大きなホームランだけだとなかなか足りなくて、大きなホームランに加えていくつかの小さなホームラン、あるいは複数の中間サイズのホームランが必要だったりするということです。そうでなければ、3倍のリターンを達成は難しいのです。多くのVCが3倍以下、あるいは2倍以下のリターンに終わり、フェードアウトしていくのはこのためです。

最近、少なくともアメリカでは、預金金利は4%に近くなってきました。つまり、仮に100億円を4%の金利つく口座に入れておけば、10年後には約150億円になるのです。VCは最もリスクの高い投資資産です。最も安全な投資資産である預貯金のリターンが1.5倍もある場合、VCのリターンがわずか2倍だとしたら、どちらを選ぶべきでしょうか。

ここ数年は多くのVCが立ち上がってきています。VCは誰でも始められますが、VCらしいリターンが出せる人は多くありません。だからこそ、その中から優秀な強いVCをどうやって見極めるかは、VC投資を行う上で重要です。特に今のような時期は特にその重要性がさらに増します。

References:

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