#184 シードステージのスタートアップも利用するベンチャー・デット

ますます大きく、多様化していくベンチャー・デット市場
46(Youngrok) 2024.07.22
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先週は急に体調が悪くなり、水曜日は午後の予定を全てキャンセルして安静をせざるを得ませんでした。改めて健康第一という思いと、年齢を重ねるほど運動ももっと着実にし、生活も規則正しくしなければならないと思いました。でも最近は一緒に寝ている娘が着実に朝5時に起きてくれて、一生叶わなかった夢である規則正しい超朝型人間生活を毎日体験しています。週末には24時間空いているドーナツ屋に6時に行って早朝からドーナツを食べたり、一日をとても長く、そして楽しく生活しています!(追伸:でもお願いだからもう1時間だけ寝てくれ)。

Bob's Donut & Pastry Shop

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ベンチャー・デットは、米国のベンチャー・キャピタル市場において、今や主要な資金調達手段として浮上しています。 5年前までは、「ベンチャー・デット」や「プライベート・クレジット」などの用語はまだそこまで浸透してなかったのですが、今ではその有用性が高まり、認知度と利用がさらに増えました。

US Venture Debt activity As of 3/31/2024 from The Q1 2024 PitchBook-NVCA Venture Monitor

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驚くべきことに、ベンチャー・デットは、シードやシリーズAを含む初期段階のスタートアップでも活用されています。例えば、Facebookは、シリーズAの資金調達を行う前に、最も古く、かつ最大手の1つであるWestern Technology Investmentからベンチャー融資を受けました。 同様に、現在40億ドルの価値を持つShipBobも、シリーズAラウンドの前にベンチャー融資を利用しました(ソース:PitchBook)。

創業者にとって、ベンチャー・デットは様々なメリットを提供します。まず、エクイティとは異なり、既存の投資家や創業者は所有権の希薄化を心配する必要がありません。また、ベンチャー・デットはエクイティよりも早く資金を調達することができます。資金を急いで必要とするスタートアップにとって、ベンチャー・デットは良い選択肢となります。また、創業者はベンチャー・デットを活用して、次の資金調達ラウンドで会社の価値を高めるための重要なマイルストーンを達成することができます。例えば、主要顧客を獲得するために3千万円が必要で、その顧客を獲得すれば数億円の売上を達成できる状況であれば、ベンチャー・デットで必要な資金を調達し、主要顧客を獲得した後、より高いバリュエーションで次のエクイティラウンドを行うことができます。

このような魅力により、ベンチャー・デットの需要が増加すると同時に、融資を提供するフィンテック・スタートアップも急増しました。 若いeコマース企業に融資を提供し、昨年10月にユニコーンになったClearcoは、このトレンドの代表的な例です。スタートアップだけでなく、PayPal、Stripe、Shoppifyなどの大手フィンテック企業もベンチャー・デット分野に参入しています(ただ、同時にAmplaのような失敗例も出てきています)。

また、かつてベンチャー・デット業界1位だったシリコンバレーバンクの没落や厳しい資金調達環境が重なり、ベンチャー・デットを提供する小規模なファンドも多く登場しました。これらのファンドの一部は、ワラント付き債券を発行します。これにより一般的な融資に加え、株式も所有できる構造で融資を行い、該当会社のアップサイドの恩恵も少しは受けることができるようになります。

これらのファンドの投資領域は様々です。ジェネラリストなファンドもあれば、特定のセクターに特化したファンドもあります。例えば、コンシューマー企業のみを対象とするファンドもあれば、特定の業界を対象とするファンドもあります。このように専門性を持つのは意味があります。ハイリターン・ハイリスクのエクイティとは異なり、債権の場合はリスクをある程度アンダーライティングしないといけないため、それぞれ業界とビジネスのモデルを深く理解する必要があります。

日本でもベンチャー・デットはもはや見慣れた概念ではないと思います。何なら一回流行りが過ぎ去ったようにも見えます。ただ、今の米国のベンチャー・デット市場の進化と多様化を見ると、日本のベンチャー・デットでも似たような流れに進化し続けるかもしれません。

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