#84 スタートアップの新しいメッカ、マイアミに行くべき?

しかし投資家にしろ創業者にしろシリコンバレーを諦めるのは時期早々
46(Youngrok) 2022.08.15
誰でも

最近ガソリン値段が下がって来ているのですが、先週はついに近所のよく行っているガソリンスタンドで5ドル/ガロンを切りました!去年までは3ドルもしなかったので、それに比べるとまだまだ高いですが、一時期6ドルまで上がっていたので、すごく安く感じています。今回の経験で次の車はやっぱり電気自動車かなと思っています!(実は2019年テスラのサイバートラックの発表があった時に一応プレオーダーの予約はしています)

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日本では感染者数が大幅に増えて来ているというニュースが最近連日報道されていますが、アメリカではもはやパンデミックとはほぼ無縁のような生活を送っています。多くの人が室内でもマスクをしていないし、レストランから色々な室内外のイベントまで、すべてが平常に戻っているように見えます。しかし、職場復帰の動きとなると、まだ時間がかかりそうです。グーグルやアップルなどのテック企業は今年4月から従業員にオフィスへの復帰を求め始めています。ただし、まだまだリモートワークが主流だからか、サンフランシスコは100%パンデミック前の状態に戻ったとは言えない状況です。

しかし、これはサンフランシスコ、あるいはより広くシリコンバレーがスタートアップのメッカとしての地位を失いつつあることを意味するわけではありません。ちょうど1年前にこちらの「#33 重要なのはサンフランシスコが終わったかどうかではない」の記事でも紹介したように、シリコンバレーが地位を失いつつあるかどうかではなく、新しい地域が台頭していることを認識し、投資家として、そしてスタートアップ創業者としてどう行動するべきかを考えていくことが重要です。

新たに台頭している地域で最も注目を浴びているのは当然マイアミです。サンフランシスコやニューヨークといった都市から多くのスタートアップ創業者たちや著名なVCたちがマイアミのビーチに移りました。あの著名VCのアンドリーセン・ホロウィッツは、今年中にマイアミに新しいオフィスまでオープンする予定です。

実際、全米のスタートアップ投資件数にマイアミが占める割合は着実に上がってきています。要するに米国VCマーケットにおけるマイアミの存在感は少しずつ上がって来ているのです。特に2021年から2022年にかけて、PitchBookはマイアミのシェアが1.94%から2.49%へと(28%アップ)に跳ね上がると予測しています。

全米のスタートアップ投資案件数にそれぞれ地域が占める割合の成長率

全米のスタートアップ投資案件数にそれぞれ地域が占める割合の成長率

そのほかに面白そうな地域はフィラデルフィアです。マイアミほどではありませんが、上の表でわかるように、ベンチャー投資案件のシェアが着実に伸びてきています。2021年から2022年にかけて、PitchBookはPhiladephiaのシェアが3.08%から3.37%へと(9.4%アップ)に上がると予測しています。

しかし、ここで着目しないといけないのは実際の数字です。マイアミは大幅に伸びて、ようやく2.49%、フィラデルフィアは3.37%にとどまっています。著しく伸びているとはいえ、全体への影響はかなり限定的なのです。一方で、アメリカにおけるメジャーなスタートアップ地域であるシリコンバレー、ニューヨーク、ロサンゼルス、ボストンの4地域を合わせると、ディール数ベースで50%以上、ディールの金額ベースで70%以上を占めます。去年に続き、まだまだ影響力が衰えているとは言えません。

上位4地域のディール数は合わせて50%以上を占める

上位4地域のディール数は合わせて50%以上を占める

マイアミやフィラデルフィアといった新しい地域が抱えるいくつかの課題には、人材プールが含まれます。スタートアップとして成長し続けるためには、優秀な人材の採用は必須です。しかし、マイアミとフィラデルフィアは、他の地域よりも相対的に大学卒業者の比率が低く、人材プールへのアクセスが制限されている可能性があります。また、特にマイアミでは、トップクラスの大学がないため、将来人材へのアクセスを疑問視する声もあります。最近はリモートワークが主流であるため、この点はあまり重要ではないかもしれないですが、考慮に入れておく必要があることは確かです。

各地域の大学卒以上の学位を持つ人口の割合

各地域の大学卒以上の学位を持つ人口の割合

最近、マイアミやその他の新しい地域の台頭についてよく耳にすることがあるかと思いますが、それとは関係なく、少なくとも現段階では4つのメジャーな地域に焦点を当て続けることは重要です。それら地域は、成功したスタートアップをインキュベートした経験があり、VCとしての大きな投資リターンをもたらした実績を持っているので、投資家にしても創業者にしてもリスクをコントロールすることができます。

とはいえ、それ以外の都市が台頭していることも事実ですので、それら地域へのアプローチも進めるべきです。ただし、保守的にです。例えば、経験豊富な創業者が新しい都市でスタートアップを始めることや投資実績がある投資家が新しい都市で投資を始めることで、不確実性が大幅に軽減され、新しい地域だからこそ生まれるであろう潜在的なアップサイドをも捉まえることができます。

References:

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