#110 VCファンド出資、LPはどれくらい儲かる?

フィーはLP収益にかなり大きなインパクトを持つ
46(Youngrok) 2023.02.13
誰でも

先週は久しぶりにニューヨークに行ってきました。出資先ファンドの年次総会のようなものがあって行ってきたのですが、マンハッタンは米国最大の都市であるだけに、やはり圧倒的な規模だなと改めて思いました。あとは米国の広さも改めて感じましたね。SFからNYまで6時間くらいかかります。NYからロンドンまでが7時間くらいなので、この国は本当に広いなと!

The Rink at Bryant Park

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LP(リミテッド・パートナー)とは、VCファンドに投資を行う投資家のことを言います(VCのみならずあらゆるファンドの投資家をLPと言います)。彼らはVC市場に資本を提供する者であるため、スタートアップエコシステム全体において極めて重要な役割を担っている存在だといえます。

VC投資に対する認知度、実際の市場規模ともに大きくなっていくにつれて、LPの存在感も増してきていて、彼らの成功ストーリを耳にすることも少なくない。しかし、実際にLPたちはVCファンドへの投資を通じてどの程度儲かるのでしょうか。

まず、VCファンドの手数料体系、つまりLPが自分達の資金を運用してくれる対価としてGPに支払わなければならない手数料(フィー)を理解する必要があります。まず、最初の手数料はマネジメントフィーです。これはLPが何があっても定期的に支払う手数料です。もう一つはキャリード・インタレスト、これは成功報酬です。キャリーとも言いますね。LPは投資利益の一定割合を成功報酬としてGPに支払いします。

アメリカの場合、これら手数料の市場の標準は2/20です。すなわち、マネジメントフィーが2%、キャリード・インタレストが20%です。例えば、LPが100ドルの投資をコミットした場合、LPはマネジメントフィーとして毎年2%の2ドルを支払わなければなりません。また、そのLPが今回の投資を通じて100ドルを儲けたとすると、成功報酬として20%の20ドルをGPに支払わなければなりません。

ところで、VCアセットクラスが人気を集めるにつれ、手数料が高くなってきたところもあるようです。また、国ごとに手数料水準が違うケースもあります。例えば、アメリカより日本のVCの方が手数料が高い傾向があるように感じます。

しかし、最近の市場の不透明感を考えると、高い手数料は将来的に大きな違いを作っていく可能性があります。

次の極めて単純化したモデルは、2つのファンドにおけるLPの最終利益を比較したものです。Fund Aは一般的な2/20で、Fund Bは2.5/25です。これは、両方のファンドの投資額が3倍になった場合(g)、LPの最終利益(m)はそれぞれ2倍と1.83倍となることを示しています。仮に100ドルの投資をした場合、Fund Aに投資をしたLPは100ドルの利益を得たのに対し、Fund Bに投資をしたLPは82.5ドルしか得られないことになります。なんとFund Bに投資したLPの利益は21.2%も低いのです。すなわちLPの最終的な利益が21.2%も低いのです。

逆に、Fund BのLPも同じ2倍のリターンを得るためには、Fund Bの投資額が3倍ではなく、3.3倍になる必要があります。前回の記事でも述べた通り、3倍のリターンを作るのは決して簡単なことではありません。当然それを超えるリターンを作るのはさらに難しくなります。LPは、Fund BがFund Aよりはるかに優れた能力を持ち、少なくともFund Aと同じレベルのリターンを作ることができるかどうかを見極める必要があります。仮にFund Aが3.3倍を達成した場合、LPへのリターンは2.18倍とさらに高くなります。

全てのビジネスにおいて、「欲」は重要であり、当然VCも例外ではないと思います。しかし、最近のVC市場の状況を考えると、例え高い手数料が取れるとしてもその欲は少し我慢して、LPの最終的な利益を最大化することに集中することが、LPからの信頼を勝ち取る方法であり、今のような不確実性が多い時期を生き残るのに必要ではないかと思います。

References:
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