#193 ヴィンテージの多様化:ベンチャーキャピタル投資の成功に欠かせない戦略
サンフランシスコにも秋の気配が漂い始めました。もともと四季がはっきりしているわけではありませんが、日が少し短くなり、朝晩は少し寒くなっています。写真に写っているFarley'sは、サンフランシスコのPotrero Hillにある昔ながらのコーヒーショップです。コーヒーが美味しく、雰囲気もよく、家から近いので、時々訪れます。先週は、出資先のGPとこのカフェでキャッチアップしましたが、昼間は多くの創業者たちが集まる場所でもあるようです。市の中心部からは少し離れていますが、サンフランシスコに来る機会があれば、ぜひ立ち寄ってみてください。
ベンチャーキャピタルにおける「ヴィンテージ」とは、ファンドが本格的にスタートアップへの投資を始めた年を指します。例えば、あるファンドが2023年に設立され、2024年に投資を始めた場合、そのファンドのヴィンテージは2024年です。ヴィンテージの分散は、投資ポートフォリオを構築する際に考慮すべき重要な要素で、複数のヴィンテージに分散投資することで、リスクを抑えながらリターンを最大化できます。
以下のグラフは、2000年以降の各ヴィンテージにおける、上位25%、中央、下位25%のVCファンドのパフォーマンスを示しています。これを見ると、どのグループもヴィンテージの年次に応じて似た傾向を示していることがわかります。好調な年にはどのグループのファンドも良いパフォーマンスを記録します。ただ、同じ年にスタートしたファンドの中で、誰がよりうまく投資ができて、誰があまりうまく投資ができなかったのかが別れるだけなのです。
この現象は、マクロ経済やテクノロジトレンド、VCファンドの投資環境などの色々な要因がスタートアップとその結果としてVCファンドのパフォーマンスに影響を与えるため生じます。好況期には多くのファンドが好成績を残しますが、不況期には優れた投資家でさえ比較的に良いリターンを得ることが難しくなることもあります。
このような傾向はベンチャーキャピタルだけに限りません。S&P500指数の年別リターンを見ても、株式市場のパフォーマンスが年ごとに大きく変動することがわかります。
S&P500の年別リターンチャート
このボラティリティが示すのは、資産全体にわたってヴィンテージを分散投資することの重要性です。
過去のデータからは多くの洞察を得ることはできますが、将来どのヴィンテージが最も良いパフォーマンスを出せるかを正確に予測するのは困難です。2008年の世界金融危機やCOVID-19パンデミックのようなブラックスワン・イベントは、ほぼ誰も予見できませんでした。このような予測不可能な出来事は、ヴィンテージごとのパフォーマンスに大きく影響を与えるため、複数のヴィンテージにリスクを分散することが重要です。
ヴィンテージ分散を効果的に達成する方法の一つがファンド・オブ・ファンズによる投資です。この戦略には以下の利点があります。
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分散投資: ファンド・オブ・ファンズのマネージャーは、複数のヴィンテージや投資戦略に資金を分散します。
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トップファンドへのアクセス: 実力のあるファンド・オブ・ファンズは、トップファンドへのアクセスを持ちます。
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低い最低投資額: 個別ファンドに直接投資するよりも少ない金額で、広範な分散投資が可能です。
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継続的なモニタリング: ファンド・オブ・ファンズのマネージャーは投資先のパフォーマンスを定期的に管理・報告します。
ヴィンテージ分散は、ベンチャーキャピタル投資に限らず、すべての長期投資で重要な戦略です。複数年にわたる分散投資によって、投資家は市場のさまざまなサイクルで投資機会を捉えやすくなります。どのヴィンテージが最も良いパフォーマンスを見せるかを事前に知ることはできませんが、ヴィンテージ分散を実施することでリスクを減らし、より安定したポートフォリオを構築できます。直接投資でも、ファンド投資でも、ファンド・オブ・ファンズ戦略でも、ヴィンテージ分散を意識することで、強固なVCポートフォリオを形成できるでしょう。
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