#67 巨大化するVCファンドから読み取るVC業界の進化

ついにVCファンドにクリエイティブさが求められる時代へ
46(Youngrok) 2022.04.18
誰でも

日本のホテルは14日以上、同じ部屋に泊まるのがだめなようです。そのために14日が経ったら同じホテルの他の部屋に移動しないといけません。どうせ部屋を変えないといけないのであれば、せっかくなので、違うホテルにしてみようということで、先週末は近くに新しくできた麻布十番のOakwoodのサービスアパートメントに引っ越しをしました。狭いものの、綺麗で必要なものは全部揃っていてやっぱり便利だと感じています。何よりも、前のホテルは洗濯のために外のコインランドリーまで行かないといけず、洗濯が終わるまでWFC(Working From Coin laundry)を余儀なぐされていたので、それがなくなっただけでもとても満足しています!

朝7時前のWFCの風景

朝7時前のWFCの風景

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VCファンドのAUMがどんどん大きくなってきています。セコイア(Sequoia)は今や$85B(≒10兆円)を誇り、アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)も$54B(≒7兆円)にのぼります。この金額の規模感をお伝えするためですが、大体10兆円だと、三菱UFJフィナンシャル・グループの時価総額に相当しますし、7兆円だとファーストリテイリングの時価総額に相当します。実に大きいですね。これらファンド以外にも、ジェネラル・カタリスト(General Catalyst)、ライトスピード(Lightspeed)、コースラ・ベンチャーズ(Khosla Ventures)、ファウンダーズ・ファンド(Founders Fund)など、多くのファンドが現在$10B(≒1.3兆円)以上のAUMを持ちます。

AUMですが、Asset Under Managementの略で、運用資産残高のことです。簡単にいうと、VCが投資運用している現金、株式、暗号通貨などあらゆる種類の金融資産の総量、残高を示します。つまり、VCが新たなファンドを作って資金を調達したり、保有する投資先企業の株価が上昇したりすると、AUMは増加します。一方、運用する資産が減ると、AUMも減ります。例えば、投資先企業が上場し、ファンドがその持分を売却するとAUMも減ります。もうその会社の株式は運用してないからです。

ベンチャーキャピタルは、プライベート・エクイティというアセットクラスの一種で、プライベート・エクイティには大きく分けて2種類のアセットクラスが存在します。VCファンド(ベンチャーキャピタル)がその一つで、もう一つはPEファンド(プライベート・エクイティ)になります。ちょっと分かりにくいのですが、PEファンドもVCファンドもプライベート・エクイティの種類に入りますが、PEファンドだけがそのままプライベート・エクイティの名前を使います。

一般的にPEファンドはバイアウト・LBOファンドを指します。一言で言えば、これらファンドはVCのように単に投資だけをするのではなく、上場企業または未上場企業を買収し、会社の価値を上げて買収したより高く売却をするというような投資を行います。このようなPEファンドの投資スタイル上、一般的に彼らのファンドはVCファンドより全然大きいのが一般的です。

しかし最近、VCファンドの肥大化に伴い、VCファンドとPEファンドの規模の差は縮まってきています。例えば、最大のPE投資家の一人であるブラックストーン(Blackstone)のPEファンドのAUMは$126B(≒16兆円)です。同じく最大のPEファンドであるKKRは約230B(≒30兆円)。但し、これはプライベート・クレジットなど、他の金融商品も含む金額で、純粋なバイアウト・LBOファンドだとその規模はより小さくなります。セコイアが10兆円まで接近してきているので、本当に大きな差は感じないようなレベルになってきています。

タイガーグローバルといったヘッジファンドやPEファンドといった、VC業界における非伝統的な投資家たちがどんどんとベンチャーキャピタル投資に参入してきています。しかし、同時に、VCファンドもレイトステージ、さらにはパブリックマーケットにまでその影響力を増やしてきています。セコイアは、価値が引き続き上がると信じる投資先会社に関しては、上場後その会社の株が持ち続けられるようにファンドを再編しています。VCファンドは投資先が上場すると持分を売却するのが普通です。

PEファンド、ヘッジファンド、VCファンド、その他全ての投資家において扱うアセットクラスの境界が曖昧になってきています。上で話たケース以外にも、色々な違う投資戦略を持つ数百以上の規模の小さいナノファンドが続々と誕生してきているのも、VC業界では前例のない傾向です。VCという業界は、過去10〜20年間、大きな変化が殆どありませんでした。しかし、今や競争力を維持しながら生き残るために、変化し続けなければならない時代になってきています。

PEファンドもVCファンドも、非常に長いフィードバック・ループを持っています。ファンドのサイクルは10年なので、成功したかどうかをすぐに判断するのは難しいです。10年経ってみないと成績がわからないのです。つまり、新しいことにチャレンジせず、既存のやり方のみに頼っていては、いざ変革をしようとするときにはもう手遅れになっている可能性が高いです。他のファンドはみんな10年前にその動きを始めているからです。

色々と環境が変わってきている中、ついにVCファンドにそれぞれのクリエイティブさが求められる時代かもしれません。VC市場は今まで以上にエキサイティングになることは間違いなさそうです。

Reference:
・The biggest VC firms are managing a lot more moolah than you thought - https://techcrunch.com/2022/04/04/the-biggest-vc-firms-are-managing-a-lot-more-moolah-than-you-thought
・SCOOP: Crypto Fund Paradigm's Assets Under Management Climb 343% to $13.2 Billion - https://www.newcomer.co/p/scoop-crypto-fund-paradigms-assets-423?s=r 
・World’s Top 10 Private Equity Firms - https://www.investopedia.com/articles/markets/011116/worlds-top-10-private-equity-firms-apo-bx.asp

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