#86 1.8兆円の損失を被ったセコイア・キャピタル

でも心配することではない
46(Youngrok) 2022.08.29
誰でも

海沿いの街ということもあり、サンフランシスコはシーフードが有名です。その中で、チョッピーノ(Cioppino)というイタリア系アメリカ料理があるのですが、サンフランシスコが発祥地とされています。今日Sotto Mareという有名なシーフード系イタリアンでDoorDashを頼んで初めて食べてみたのですが、かなり満足でした!是非次サンフランシスコに来る機会がある方は試してみてください!:)

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セコイア・キャピタル(Sequoia Capital)は、50年の歴史と10兆円以上($85B)の総資産残高(AUM)を持つシリコンバレーのトップ中のトップVCです。そのセコイアが、昨年10月に新しいファンドの仕組みである'The Sequoia Capital Fund'を発表しました。一言で言うと、自社の多くのファンドを傘下に持つホールディングスのような仕組みで、これからセコイアの投資家(LP)たちは、ホールディングとなるファンド一本のみに投資をすることになり、その資金を自社のどのファンドにどう配分するかはセコイアが決めます。もう一つの特徴としては、これからは投資先企業が上場した後でも特に売却することなく、数年だろうが若しくは数十年だろうが、望むだけ長く保有することができるようになったことです。

このような新しい仕組みを導入した理由の一つは、IPOはあくまで企業における一つのマイルストーンに過ぎず、投資家として未公開企業か公開企業かに関わらず、支援を続けていきたいと考えているからです。この考え方には全く同感です。投資家が公開市場でも投資先企業にバリューを提供できて、かつその会社からVCレベルの投資リターンが得られると判断できれば、企業が公開された後も持分を保有すべきです。

当然、株式市場が活況の時には「この仕組みを支持する」と言うのは簡単です。持分の株価が段々と上がっているからです。セコイアが新体制を発表したのも昨年のまだ株式市場が良かった頃です。但し、今の状況で、同じ発表はできるのでしょうか。おそらく難しいと思います。

実際彼らの持分の価値が大きく低下しているようです。今年4月から6月までの第2四半期で、米国、欧州、アジアを含む同社の公開株の持分は42%減の約2.4兆円($17.7B)まで下がりました。これは、同社の損失が約1.8兆円であることを意味します。ソフトバンクの3.2兆円の損失と比べればまだ小さいが、インパクトの面においては負けない規模です。今回大きく影響を受けた持分にはDoorDash、Snowflake、Nubankといった会社が含まれます。

しかし、だからと言って彼らの新しい仕組みが間違っているとは決して思っていません。セコイアはバリュエーションが100億円もしなかったシリーズAラウンドでDoorDashに投資をしました。同社は現在IPO価格の3分の1で取引されていますが、それにも関わらず3兆円くらいの時価総額を持ち、バリュエーションは300倍以上に伸びています。

シードラウンドで投資を行ったNubankも同じようなストーリを持ちます。同社の株は今IPO価格の40%で取引されているが、それでも同社の時価総額は3兆円ほどあります。

しかも、これらの損失はすべて「未実現」の損失であり、セコイアはまだ株を保有しています。株価が再び上昇するまで保有し続けることもできます。繰り返しになりますが、セコイアの新しい仕組みは、投資先の持分をいくらでも長く保有することを可能にしています。

結論としては、セコイアは自分達の今の損失はあまり心配していないと思うし、投資家であるLPたちも心配する必要はないです。たとえ、今去年の10月に行った'The Sequoia Capital Fund'の発表をしたとしても、セコイアの投資家というタイトルを持っている投資家はそのタイトルを手放すかどうかは慎重に考えるべきではないかと思います。

Reference:

・Public Stock Held by Sequoia Capital, Andreessen and Bessemer Fell 44% in Second Quarter - https://www.theinformation.com/articles/public-stock-held-by-sequoia-capital-andreessen-and-bessemer-fell-44-in-second-quarter

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