#82 スタートアップまたはファンドの資金調達が難しい理由は?

資金調達は営業活動である
46(Youngrok) 2022.08.01
誰でも

先週末はついに実際あった話を背景とするウルフ・オブ・ウォールストリート(The Wolf of Wall Street)という映画を見ました。3時間の映画ですがあっという間に終わるくらい面白かったです。いくつか感じたこととしては、主人公のレオナルド・ディカプリオや役者さんたちの演技が物凄いうまい、Suicide Squadで有名で彼の妻として出演するマーゴッド・ロビーはやはり綺麗ということ以外にも、主人公たちが扱う「Penny Stock(一株5ドル以下の主にOTC市場で取引される超小型株)」が今の暗号資産市場の「草コイン」と似ているところがあると思いました。ボラティリティが高くリスクも高い、情報も限られている、多くのスキャムが走るなどです。映画は1990年代を背景にして、主人公はPenny Stockを使った多くの詐欺で莫大な富を築くのですが、Penny Stockにまつわる詐欺は別に今も起きているようです。最近、色々と規制が強化されている暗号資産ではありますが、草コインに関してはもしかしたら時間が経ってもそのレピュテーションはあまり変わらないかも知れません。

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あなたは素晴らしいアイデアを持っていたので、スタートアップを立ち上げることにしました。とても優秀なメンバーで創業チームも作ります。そのあと、MVP(Minimum Viable Product)も無事ローンチし、初期の潜在顧客からポジティブなフィードバックも得ることができました。そして、さらに次のステップに進むために、ベンチャーキャピタルから資金を調達することにします。そのあと、あなたは何十人もの投資家と話をしました。しかし、まだ、タームシートは貰えていません。

少し違うバージョンもたくさんあるでしょうが、この話はスタートアップのコミュニティでは非常によくある話です。これは多くの新しいファウンダーが、資金調達の本当の意味を誤解しているために起こることだと思います。資金調達とは、投資家に自分の会社がいかに素晴らしいかを単にアピールすることではありません。資金調達は営業です。即ち、投資家がもっと聞きたいと思うように、商品だったら買いたいと思うように、話すをすることが大事なのです。

誤解しないでください。ファウンダーの情熱、立派なアイデア、巨大な市場規模など、全て重要です。決してこれらが重要でないと言っているのではありません。しかし、それらのメッセージをどう伝えるのかを考えるのは資金調達において本当に大切なのです。 

例えば、創業メンバーが全員スタンフォードやハーバードを卒業している人ばかりだとしましょう。彼らは大学卒業後、一流企業にも就職しています。グーグル、アマゾン、ゴールドマン・サックス、ブラックストーン、マッキンゼー、BCG、などなど。当然ファウンダーはチームに対して自信があり、堂々と彼らの出身学校、出身会社のロゴをピッチデックにペタペタと貼っています。「私たちはすごいチームだよ」というのを見せるためです。

しかし、ここで投資家の立場に立ってみましょう。彼らは何百も何千ものスタートアップに出会います。これほど多くのスタートアップに会っていくと、あなたの会社のように優れたメンバーで構成されている他のスタートアップにも多数会う機会が出ます。ですので、多くのスタートアップに会っていけば会うほど、残念ながらあなたのチームは必ずしもユニークではなくなるのです。2021年現在、スタンフォード大学だけでも17,000人以上の学生がいます。Googleは全世界で135,000人の正社員を抱えています。これらは大きな数字です。ですから、あなたのチームのメンバーが全員スタンフォード出身で、全員Googleで働いていたと言うのは、素晴らしいことではありますが、必ずしも投資家の観点からは際立った魅力ではない可能性が高いのです。

したがって、ファウンダーたちは、投資家があなたの会社をユニークだと思い、もっと知りたいと思うような内容を、どのように伝えるべきかについて深く考えるべきです。これからピッチする投資家はどのようなスタートアップに興味があるのか?そしてどのようなマーケットに興味があるのか?また、なぜ彼らはあなたのスタートアップに興味を持つべきなのか?などです。

上で話したチームの話に戻ると、リーチする投資家を選定する上で、以前似ているチーム構成のスタートアップに投資をした経験がある投資家を探したり、チームメンバーがスタンフォードでどのような勉強をして、グーグルではどのような仕事をして、なぜその経験があなたのスタートアップの成功に導くことができるか、そしてその投資家がどのように残っているギャップを埋められるのかを考え、伝えることが大事です。

映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」で主人公のJordan(レオナルド・ディカプリオ)が友人のBradに「私にペンを売ってみて」と話す場面
映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」で主人公のJordan(レオナルド・ディカプリオ)が友人のBradに「私にペンを売ってみて」と話す場面

VCファンドの資金調達にも同じ原則が当てはまります。こちらの記事「Attempting the Impossible」は、「投資ビジネス(Investment Business)」と「投資活動(Investment Practice)」の違いとは何かについて、とてもうまく説明しています。一言で言えば、資金調達は「投資ビジネス」の一部であって、ビジネスというのは、お客さんが欲しいものを与えるものだと話しています。

私も今絶賛ファンドの資金調達をやっていて、その大変さはよく分かっています。とはいえ、私が資金調達の達人だからこの記事を書いたわけではありません。ただ、少なくとも資金を調達する側、そして投資をする側の両方に立っている人として、この記事で話した内容の大事さはよく理解しています。また、これを常に意識することで資金調達のプロセスも少しずつ改善できるのではないかと思っています。

References:
・Sell me this pen - Wolf Of Wallstreet - https://www.youtube.com/watch?v=9UspZGJ-TrI
・Attempting the Impossible - https://neckar.substack.com/p/attempting-the-impossible

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