#54 2021年大きく増えたユニコーンの数と良い気分になるVC

マーケットの状況に関わらず、ポートフォリオ構築について考え続けるべきである
46(Youngrok) 2022.01.16
誰でも

こんにちは、今日は初めて正式にtheLetterを使ってニュースレターをお送りいたします。これからもより読みやすいフォーマットでお役に立ちそうな内容がお届けできるように頑張りたいと思います。:)

さて、皆さんご存知の通り、アメリカでもコロナかなり流行っています。周りにも何人か出てきたんですが、妻も体調が悪くなりコロナではないかと心配したのですが、コロナ検査の結果陰性でホッとしたハプニングもありました。これからもくれぐれもコロナには気をつけましょう!

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2021年、米国で294のユニコーンが誕生した。その1年前は64個だった。単純に考えると2020年に比べて4倍以上のユニコーンが2021年に誕生したのだ。簡単な計算のため、2020年に投資先企業の1%がユニコーンになったと仮定すると、2021年には投資先企業の4%がユニコーンになったと言える。100社のスタートアップに投資するファンドがあったとして、2020年には1社のみがユニコーンなったが、2021年には4社がユニコーンになったという試算もできる。これは何を意味するのだろうか。それは、VCファンドのポートフォリオ構築戦略に興味深い示唆を与える可能性がある。

出典:CBInsights
出典:CBInsights

まず、ポートフォリオ構築に関しては、「ファンド・リターナー(Fund returner)」という概念を理解する必要がある。これは、投資先企業が$1B(約1,000億円)、あるいはユニコーンでエグジットした際に、ファンドのサイズと同額を回収するために、その投資先企業に対してどれだけの株式を保有する必要があるかという概念である。

例えば、10億円のファンドの場合、ファンド・リターナーは、ユニコーンの段階でそのスタートアップの1%を保有する投資先である。この投資先企業が1,000億円の評価額で上場した場合、ファンドはこの投資先企業の1%、すなわち10億分を持っているので、この一社からのリターンがファンド規模と同額になる。つまり、ファンド・リターナーなのだ。一つ注意点は、資金調達ラウンドがシードから後期に移るにつれて持分はダイリューションするため、ファンドは最初の投資時に1%以上を保有する必要がある。

これは、VCがどの程度のバリュエーションでどの程度の持分を狙うかを決める際の経験則となっていて、個々の案件でファンドのリターンを狙うように投資を行うが美徳とされている。常に例外はあるし、それぞれファンドの具体的な投資戦略によって違いも出てくるものの、ファンド・リターナーになりそうにない案件には投資しない場合が多い。つまり、非常に魅力的な案件であっても、例えば、最初のシードラウンドで0.1%しか持分が取れないのであれば、ファンド・リターナーにならない可能性が高く、全体的なファンドのリターンを押し上げる可能性も低くなるのでファンドの資金を有効に活用できない可能性がある。つまり機会費用が発生する。

それでは再度ユニコーン数の増加の話に戻りたい。例えば、10億円のファンドがあり、100件に投資をした場合、2020年にユニコーンになったのは1%の1社のみなので、ファンド・リターナーのルールに沿って投資を行うとなると、各投資先の1%以上の持分を狙う必要がある。

しかし、2021年には100社中4社がユニコーンになっている。つまり、同じファンドでも、4社まとめてファンド・リターナーとなることが可能になったため、各案件で0.25%の持分を目標にすればよい。当然0.25%を狙う出資は1%の出資より簡単なため、前より簡単にファンド・リターナーを作ることができるようになったと言える。

これはVCのポートフォリオ構築の考え方に影響を与える可能性がある。0.25%の出資は1%出資より簡単だが、それでも「良い」リターンを得るチャンスは十分に出てきたからだ。0.25%の持分だけを狙いにいくファンドが増えるのも想像し難くない。

しかし、この傾向は同時に、1%の保有比率を持つファンドは、さらに良いリターンを生み出すことを示唆する。100の投資先中、ユニコーンの数が1から4と増えたので、潜在的なリターンは4倍となる。単に「良い」リターンではなく、「凄く良い」リターンを作り上げている可能性があるのだ。

決してすべてのファンドが1%を目指すべきと主張しているわけではない。且つ、ここで取り上げた数字は説明のためであって、実務とは距離のある数字である。しかし、重要なことは、ベンチャー・キャピタル・ファンドにとって、ソーシング能力とポートフォリオ・マネジメントは、全く異なるものであるということである。ソーシング能力だけが注目を浴びがちだが、ポートフォリオ・マネジメントも同レベルで重要であるのだ。過去の記事「#42 ベンチャー投資のポートフォリオ構築:集中型 vs 分散型」でも説明をしたが、ポートフォリ構築にはいくつか異なる戦略があり、正解となる戦略はない。ちなみに私は色々な戦略のファンドに出資をしている。

2021年はポートフォリオ構築についてあまり深く考えないファンドにとっても、満足のいくパフォーマンスを出している場合があっただろう。しかし、10年先を見据える投資であるVC投資環境において、どのようにマーケットが変化していくか読むことは不可能である。こういう時こそ、常にポートフォリ構築戦略について真剣に考え、実行しない限り、今のような競争の激しいベンチャー市場で凌駕することが難しいだろう。

References:
・The Complete List Of Unicorn Companies by CBInsights - https://www.cbinsights.com/research-unicorn-companies 

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