#76 次なるシリコンバレーを探して

地域的に多様化されるVC投資
46(Youngrok) 2022.06.20
誰でも

先週は始めてヨセミテ国立公園に行ってきました。全米で最も人気のある国立公園の一つですが、今まで行ったことがなかったのです。エル・キャピタンなど、いわゆる有名なところはヨセミテバレーというところに集まっているのですが、今回時間に余裕があったため、車でさらに北の方に1時半くらいの距離にあるトゥオルミというところにも行ってきました。遠すぎたものの、私は個人的にこっちの方が全然好きで、人の足も少なく、アメリカならではの圧倒的な大自然の雄大さに感動の連発だったのです。もしヨセミテに行く機会がある方々は是非とも北の方もお勧めします!

ヨセミテ国立公園のトゥオルミ牧草地(Tuolumne Meadow)
ヨセミテ国立公園のトゥオルミ牧草地(Tuolumne Meadow)
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アメリカはVC投資のリーダ役を担ってきています。下のチャートからもわかるように、アメリカは最も活発的にVC投資活動が行われる国です。つまり、アメリカのベンチャー投資には、たくさんの資本が流れ込んでいるのです。

2020年11月から2021年10月までのベンチャー投資総額、出典:Crunchbase
2020年11月から2021年10月までのベンチャー投資総額、出典:Crunchbase

シリコンバレーはアメリカのベンチャー投資の聖地のようなところです。1970年代のアップル、1990年代のグーグル、2000年代のフェイスブックといった企業がこの地で生まれました。また、これらの企業はすべてVC投資を受けています。セコイア(Sequoia)はアップルに、クライナー・パーキンス(Kleiner Perkins)はグーグルに、アクセル(Accel)はフェイスブックに投資をしました。言うまでもなく、彼らは今や最も影響力のあるVCになっています。

VCの投資成功例は、こうした大手・老舗テック企業に限った話ではありません。ユニコーン(評価額10億ドル、約1,300億円以上のスタートアップ)の数は、ベンチャー投資市場の潜在力を知る良い指標となります。ユニコーンが多ければ多いほど、VCが大きなエグジットを得られる可能性は高くなります。VCのリターンはエグジット額が大きければ大きいほど魅力的になりますが、これは数少ないホームランを狙うVC投資にとって重要になります。その中、下の通り、米国には最も多くのユニコーンが存在していて、高い潜在力を持っていることがわかります。

国別のユニコーン数、出典:Statista
国別のユニコーン数、出典:Statista

したがって、VCファンドに投資するLPの立場からすれば、どこの国でVC投資を行うかを決める際に、米国市場を選ぶのは難しいことではありません。過去に多くの成功事例があり、かつ多くの魅力的なユニコーンが存在し、大きな潜在的な可能性を秘めているからです。

アメリカの中でもベンチャー投資はシリコンバレー(サンフランシスコ・ベイエリア)で始まっています。しかし、それ以外の地域でも素晴らしいスタートアップが誕生してきています。例えば、ビジネスクレジットカードの最大手の一つであるRampや、ユーザーの食事量や運動習慣をトラッキングするNoomなどは、ニューヨーク生まれのスタートアップとして大きな成功を収めています。

こうしたベンチャー投資における地域の多様化は、少しずつではあるが進んできています。それでもベンチャー投資価値の1/3はまだシリコンバレーで生み出されていますが、現在ではサンフランシスコ・ベイエリアに加えて、ロサンゼルス、ボストン、ニューヨークといった都市もVC投資の主要都市として位置づけられています。この4つの地域は、米国のVC市場総額の70%程度を占めています。

#33 重要なのはサンフランシスコが終わったかどうかではない」でも話しましたが、このような「多様化」は米国内だけでなく、世界的にも起きています。他国での成功事例やユニコーンが増えるにつれ、資本が他地域にも流れ込んでいるのです。セコイアは最近、東南アジアのアーリーステージ投資向けの8億5000万ドル(約1,100億円)のファンドと、インドのグロースステージ向けの20億ドル(約2,600億円)のファンドローンチを発表しました。また、セコイアはヨーロッパにも拠点を広げ、南米地域の開拓も始めています。セコイアだけでなく、アクセルやタイガーグローバルなど、多くの米国のVCが米国外に視野を広げています。

東南アジアが世界経済の重要なエンジンの一つになりつつあることは間違いないでしょう。GojekやGrabのようなスタートアップの投資成功事例も生まれ始めています。しかし、今セコイアによる8億5千万ドルを投入するのは正しい判断なのでしょうか?この地域は、次世代のユニコーンをたくさん作るために、そのような大きな資本を受け入れる準備ができているのでしょうか?

株式投資も含め、全ての投資においてタイミングはとても重要です。いつ投資するかは、どこに投資するかということと同じくらい、いや、それ以上に重要とも言えます。これはVC投資も同じです。VC投資はハイリスク・ハイリターンのビジネスですので、タイミングの見極めはハイリスク・ハイリターンに直結します。10年前にビットコインの価値を見極められた人は、今相当な金持ちになっているでしょう。もし、今こそが東南アジアや米国以外の国が次のVCのハブになる時期であれば、セコイアの賭けは10年後に大きく報われることになるでしょう。

References:
・These Countries Have The Most Startup Investment For Their Size - https://news.crunchbase.com/startups/countries-most-startup-investment/ 
・Global Unicorn Herd Now Counts 1,000+ Companies - https://www.statista.com/chart/27266/unicorns-by-country-world-map/ 
・Sequoia India and Southeast Asia raises $2.85 billion funds - https://techcrunch.com/2022/06/13/sequoia-india-and-southeast-asia-raises-2-8-billion-funds/

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