#88 ベンチャー業界でコモディティ化する「関係性」

単に「仲がいい」だけじゃもうダメ
46(Youngrok) 2022.09.12
誰でも

先週の月曜日はLabor dayという休日でしたが、最近サンフランシスコ・ベイ・エリアでは毎年この週に気温が最も高くなります。今年も先週カルフォルニアを直撃したHeat Waveのせいでおかしいくらい気温が高くなったのですが、サンフランシスコ近辺地域では歴史的に高い気温を記録したようです。シリコンバレーにはエアコンが付いてない家もたくさんあり、かなり苦しむ人々も多いですが、我が家もエアコンがない家なのです…ポータブルエアコンを買うべきか数日悩んでたら涼しくなったのですが、去年も悩んでるうちに涼しくなったので、来年もこれ以上だけは高くならないことを今から願っておきたいと思います!

Labor Dayの気温(参考:100°F = 37.8°C)(<a href="https://finance.yahoo.com/news/california-heatwave-bay-area-set-172126402.html">ソース</a>)

Labor Dayの気温(参考:100°F = 37.8°C)(ソース

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ベンチャー業界は、いわゆるリレーションシップ・ドリブンでビジネスが行われます。「関係性」がとても重要で、当事者たちは関係性によって、些細なことから重要なことまで、あらゆる種類の意思決定がされ、投資のディールまで繋がったりします。スタートアップのファウンダーたちからすれば、より多くのベンチャーキャピタルと関係性を持つことで、資金調達ができるチャンスが増えますし、投資家たちにとってもできるだけ多くのファウンダーたちと関係性を持つことで、次のユニコーン会社のファウンダーに巡り合えるチャンスが増えます。

このことは、VCとLP(Limited Partners、VCファンドに投資する投資家)の関係でも顕著に起こります。VCと異なり、LPは一般的にホームページのようなものも持たない場合も多く、自分達がLP投資家であることを公にしません。従って、VCたちは頑張ってLPたちを見つけ、常に関係性を作ろうとします。逆も同じでLPたちも自分達の関係性を持っているVCや他のLPを通じて、自分達にあうVCを見つけたりします。

しかし、これは徐々に変わりつつあります。まだまだ関係性が重要ですが、単なるリレーションシップではなく「バリュー提供を基盤とするリレーションシップ」になりつつあるのです。これはどういうことかというと、ただ単に誰を知っているか、どれだけネットワークが広いのかだけではなく、自分がどのような価値を相手に提供できるのかを基盤とする関係性なのです。

このトレンドを作っている最も強力な理由は人間関係のコモディティ化と言えます。今やソーシャルメディア、特にLinkedInやTwitterを通じて、簡単に誰とも繋がることができます。最近出てきる様々なコミュニティも、人と人がつながる場になってきています。関係性がとても作りやすくなってきていて、その結果、関係性自体が薄くそして広くなってきているのです。

相手との関係がより深く、狭い時って、パーソナル・タッチがより重要でした。言い換えると、「仲良い」こと自体がその人と一緒に仕事をしたりディールをやったりするに十分な理由にもなっていたのです。しかし、人間関係がコモディティ化されていくにつれて、そのダイナミックも変化します。「仲良い」人がたくさんいるときに、誰と仕事をするかどうやって決められるのでしょうか。

ですので、どのような価値を提供できるのかが関係構築において重要になってきます。「ノイズ」が多いときこそ、他の人とは違うものを提供する必要があるのです。すなわち目立つ必要があるのです。それは、ロケット技術や暗号通貨のトークン・エコノミックスなど、非常にニッチな分野での専門知識かもしれませんし、サプライチェーン業界など、特定業界で経験かもしれません。あるいは、単にお金かもしれませんし、有名人へのコネクションかもしれません。該当トピックの話題が出たときに、人々の頭の中に思い浮かぶ人になれれば良いのです。

人間関係のコモディティ化が加速すればするほど、「仲良い」ということの重要性は失われていくでしょう。例えば、ヘルスケアのスタートアップの創業者がいて、最近LinkedInを通じて、ヘルスケア業界に深い専門知識と経験を持つ投資家と知り合ったとしましょう。さて、彼女が投資家を選ぶとき、この人と、長い付き合いはあるがヘルスケアの経験がない投資家の間で、どちらを選ぶべきでしょうか?答えは簡単なはずです。

ネットワーキングのイベントや飲み会に顔を出して、関係を広げることが悪いとは思いません。何があっても人間関係はベンチャービジネスの根幹であり、人脈作りは重要です。しかし、自分の付加価値を高める努力をせずに、それをやっても、関係性単体では意味のあるアウトプットを作ることができません。他の人が提供できないものを提供できるように、そしてそれを知ってもらうように常に努力しなければなりません。

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