#211 VC業界への就職、お金を目的としてはならない
少し前に引っ越しをした最大の理由は、娘たちのためでした。そして、結果的に家が広くなったことで、私の家での仕事環境も大きく改善されました。前の家では、夜に妻と私が同時にミーティングがあるとき、リビングルームで二人ともミーティングを行うことができず、一人が車で外に出てミーティングをしなければならないこともありました。しかし、今はそのような不便さが完全に解消されました。
それでも最近は家で仕事をする時間がどんどん減っています。ほぼ毎日外部で誰かとミーティングがあるので、結局、オフィスや他の場所で仕事をすることが多いからです。最近、多くのVCやテック企業も徐々にリモート勤務環境を減らす傾向にあるようです。ほとんどの会社が最低週3日は出勤を要求しているようで、妻の会社はほぼ週5日出勤しています。
最近では、トランプ政権が連邦政府でリモート勤務を全面廃止しようとする方針を出したりもしましたが、このような変化が少なからず影響を与えると思われます。これは結局、ニューヨークやサンフランシスコのような主要都市が引き続き人材を引き寄せる流れを強化するのではないかという気もしますね!
金曜日の午後
先日、アメリカのトップMBAを卒業したばかりの若い方から、ベンチャーキャピタル業界へのキャリアについてアドバイスを求められました。彼女はVCやスタートアップ業界での経験がほとんどありませんでしたが、一つ特に印象的だったのは、彼女が「お金のためではなく」、VCを「理想の職業」として考えているという点でした。なぜ彼女がそう確信しているのか、詳細はまだ確認の余地がありますが、VC業界では高いモチベーションが何よりも重要であるため、この発言は特に心に残りました。
近年、ベンチャーキャピタルの魅力は飛躍的に高まりました。特に2022年までの好況期には、多くの優秀な人材がこの業界に参入しました。ウォール街のヘッジファンドで活躍していた投資家たちも多数VC業界に転職しました。しかし、私たちが投資しているニューヨークのある金融業界に明るいGPによると、転職後にその決断を後悔している人も少なくないそうです。その理由は単純です。期待していたほどの報酬が得られず、近年の市況の悪化で職業的な不安が増したからです。
実際、ベンチャーキャピタルはその華やかなイメージとは裏腹に、報酬面で他の投資業界に劣ります。プライベートエクイティ(PE)やヘッジファンド(HF)と比較すると、VCの年収は相対的に低いのが現状です。LLMツール(例えばPerplexity)を使えば、以下のように報酬レベルを簡単に比較できます。ご覧の通り、VCは他の投資業界に比べて低い水準にあります。
私自身も10年前にVC業界に足を踏み入れた際、同じような状況を経験しました。私がこの業界を選んだ理由は、決して金銭的な動機ではなく、VCという仕事そのものが魅力的であり、情熱を注げる分野だったからです。実際、私がVCとして初めて正社員として働いた今はなくなったリクルートのCVC(Recruit Strategic Partners)での給与は、MBAに行くまで働いていたゴールドマン・サックスで受け取っていた給与を下回るものでした。しかし、その選択を後悔したことは一度もありません。そこで得られた学びや経験、人脈、そして投資家としての成長は、お金では測れないほど貴重なものだったからです。
実は、VC業界の仕事は、多くの人が抱く「華やかで快適なライフスタイル」とは大きく異なります。ワークライフバランスが良いと思われがちですが、現実には非常に競争が激しく、予測不可能な挑戦に満ちた世界です。そのため、この業界で成功できるのはほんの一握りの人だけです。
VC業界に進む理由が「お金」だけでは、満足できるキャリアを築くのは難しいでしょう。金銭的な成功が得られることはありますが、それは真摯に努力を重ねた結果として得られる副産物にすぎません。また、PEやHFと比べるとVCの報酬は相対的に低いですが、それでも十分に快適な生活を送れる水準ではあります(ただし、日本の状況は異なると思いますが)。すなわち、金銭的に苦しくて夢を諦めなざるをえない水準ではないということです。
VC業界に対する真の情熱を持ち、チャレンジングな課題に果敢に挑む覚悟があり、長期的な報酬に満足できる人であれば、この業界はやりがいを提供してくれるはずです。しかし、単に短期間で金銭的成功を目指すだけでは、この業界で満足するのは難しいでしょう。
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