#283 情報格差は縮まった。でも、時差はまだ残る。
私が住んでいるサンフランシスコのミッション・ディストリクトで、一番活気のある通りといえば、断然「バレンシア・ストリート」です。魅力的なレストランやショップが立ち並ぶこの通りでは、5月から10月まで月に一度、「Valencia Live」というイベントが開催されます。
この日は「歩行者天国」になり、多彩なグルメやエンターテイメントの出店が並びます。私は、先月の5月に続き、ちょうど先週開催された6月のイベントにも行ってきました。
規模が大きくて華やかなイベントというわけではありません。しかし、老若男女を問わず誰もが一緒になって楽しめる、とてもアットホームで素敵なお祭りであることは間違いありません。

バレンシア・ストリートを闊歩する娘とその友達
ここ数年で、アメリカのスタートアップ・VC市場の情報にアクセスするハードルは劇的に下がりました。
AIの発展に加え、翻訳ツールも大きく進化しました。以前であれば英語という言語の壁がありましたが、今ではある程度の英語記事であれば、色々なツールを使って誰でも簡単に内容を理解できるようになっています。
さらに、YouTubeやポッドキャストなどの情報媒体も充実してきました。かつては一部の業界関係者しか触れられなかったような議論も、今では誰でも比較的簡単に追いかけることができます。
その結果、アメリカで何が起きているのか、どのスタートアップが注目されているのか、どのVCファンドが活動をしているのか、といった情報は以前よりはるかに簡単に、日本からでも把握できるようになりました。
一方で、VC市場は公開株式市場とは異なります。多くの重要な情報は、必ずしもメディアを通じて表に出てくるわけではありません。
実際にGPと話をしたり、創業者と会話をしたり、コミュニティの中で起きていることを聞いたりすることで初めて見えてくる情報も数多くあります。しかも、大体それらの情報は非常にクリティカルな場合が多いです。
どのファンドが本当に高く評価されているのか。どのGPに優秀な起業家が集まっているのか。
こうした情報は、記事やSNSだけではなかなかわかりません。当然、単純にアメリカにいるからといってわかる内容でもありません。
その結果として起きることの一つが、「アメリカではすでに影響力が薄れているのに、日本ではまだ有名なVC」という現象です。
もちろん、そのVCが過去に素晴らしい実績を残したことは事実でしょう。ある特定の領域では今も強い影響力を持っているかもしれません。
しかし、過去に成功したことと、現在も同じ競争力を持っていることは別の話です。
かつての実績によってブランドが形成され、そのブランドが海外にも伝播していく。一方で、現地で起きている変化は必ずしも同じスピードで伝わりません。
私はここに、今でも情報の「時差」が存在していると感じています。
情報そのものへのアクセスは容易になりました。しかし、その情報が意味するものを理解し、現地で何が本当に起きているのかを把握することは、依然として簡単ではありません。
だからこそ、ファンド・オブ・ファンズや、現地のVCファンド、そしてスタートアップに直接出資する意義の一つは、単なるリターン獲得だけではなく、現地のインサイトやネットワークにアクセスできることにあると考えています。
情報格差は確実に縮まりました。しかし、情報の時差はまだ残っています。
だからこそ、表に出ている情報だけでなく、その裏側で何が起きているのかを理解しようとする努力が、これまで以上に重要になっているのではないでしょうか。
References
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