#75 やり方によって調整できるベンチャ投資リスク
先週は投資先ファンドの一つであるHustle Fundが主催すCamp Hustleというイベントがありました。サンフランシスコから南の方に車で1時間くらいのサラトガというところろで開いたのですが、名前がキャンプなだけに、一日中自然の中でイベントが行われたのです。たくさんの自然の中で今までZoomでしかあったことない人たちも会えたり、また新しい人たちにも会えたりしたのはとても斬新で、他のイベントでは感じられないリラックス感も感じつつ有意義な時間が過ごせました!
ベンチャー投資は、リスクの高い投資の一つと言われています。ベンチャー投資=ハイリスク・ハイリターンというのを聞いたことがある方もたくさんいると思います。スタートアップ投資をして、巨万の富を得たという話もよく聞きますし、逆にスタートアップに投資してお金を失ったという話もたくさん聞きます。
このようなことが起こる理由は簡単です。それはスタートアップ投資は難しいからです。詳しくは以前の記事「#68 スタートアップ投資はとても難しい」にも書きましたが、特に個人投資家にとって、スタートアップ投資で成功するのは至難の業なのです。
良いニュースとしては、別の方法があるということです。それはベンチャーキャピタルファンドに投資することです。ベンチャーキャピタルファンドは、通常20~30社程度のスタートアップに投資します。ベンチャーキャピタルというのは、複数の賭けから1つのホームランを見つけ出すことです。20〜30社のうち1社でも大成功すれば、たとえ他の投資がうまくいかなくても、リターンを得ることができます。
VCファンドは、時には10倍以上、あるいは20倍以上のリターンを得る場合がありますが、それは稀なケースで、通常は3〜5倍程度のリターンを狙います。3倍だけでもかなり魅力的なリターンで、規模感で言うと13%の利息がついている定期預金に10年間投資した場合得られる収益と同じです。
米国では、個人投資家がVCファンドに投資することができます。AngelList Rolling Fundは、ベンチャーキャピタルファンド投資に興味がある人にとってとても良い入り口になります。このサイトにアクセスし、興味のあるファンドを選び、コミットメントすることで簡単に投資ができます。
しかし、ここにも課題があります。AngelList Rolling Fundのサイトを見てるとわかると思いますが、VCファンドの数は非常に多く、どのファンドに投資するべきか判断することが非常に難しいです。実はこれは個人投資家だけの問題ではなく、ファンド投資を専門とする機関投資家にとっても簡単なことではないのです。彼らはそれを業としているくらいですから。
そこで登場するのがファンド・オブ・ファンズ(FoFs)です。FoFsを簡単に言うと他のVCファンドに投資を行うファンドのことになります。VCファンドがスタートアップへの投資の専門家であるように、FoFsは他のVCファンドへの投資を専門とするファンドです。VCファンドが20-30社のスタートアップに投資するように、FoFsは20-30社のVCファンドに投資をします。結果、FoFsは数百のスタートアップに間接的な投資をすることになります。
つまり、FoFsはETFや投資信託のようなものです。投資対象となるスタートアップのポートフォリオは広く分散されるため、リスクも非常に低くなります。以下の図は、北米のFoFの過去のリターンを示しています。2007年、下位10%のFoFだけがマイナスのリターン(-1.85%)を記録していますが、それ以外は常に儲かっています。同じ年でも下位25%は6.04%、上位10%は15.18%のリターンを上げています。
2001年から2016年までの米国FoFsの内部収益率(IRR)(データ:PitchBook)
ですので、ベンチャーキャピタル投資に興味がある個人投資家の多くにとっては、FoFsへの出資を検討するのも良いと思います。但し、今個人投資家がFoFsに投資できる方法はありません。これはFoFsのファンド・マネージャーとして、いつも非常に残念に思っています。しかし、個人投資家に大きな富をもたらす可能性を秘めているとFoFsのサービスが提供されるようになるのは時間の問題だと思います。結局のところ、我々はイノベーションに賭ける仕事をしていますので、FoFsのイノベーションも期待しています。
References:
・PitchBook Benchmarks (as of Q3 2021) - https://pitchbook.com/news/reports/2022-pitchbook-benchmarks-as-of-q3-2021
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