#261 企業の戦略投資担当者に必要なマインドセット

スタートアップと真摯な関係性構築が重要
46(Youngrok) 2026.01.12
誰でも

先週、3歳の上の子が初めて「習い事」に通い始めました。 週末のダンスクラスに通い始めたのですが、もともと踊ることが大好きなので、最初の習い事としてはとても合っているなと。最近、周りの人気のある習い事は、サッカー、ダンス、水泳あたりに分かれているように思います。サッカーにはあまり興味がなさそうで、ダンススクールは家の近くにあったこともあり、自然とその選択になりました。

「これでK-popスターのキャリアが始まったのかな!」なんて思ったわけではありませんが(笑)、この子が大きくなるごろ、AGIの時代が本格的に来ると、エンターテインメントやメディア業界は今以上に大きくなる気がします。そう考えると、AI時代にはむしろより魅力的な職業の一つになるのかもしれない、というような想像もしてみます。

***

先週、アメリカに駐在してきているCVCの方々とキャッチアップをする機会がありました。さまざまな話題を話す中で、日米問わず、戦略投資やスタートアップ連携に携わる人たちが共通して直面する「キャッチャーの限界」について話が及びました。

彼ら・彼女らは日々ネットワークを広げ、関係性を築き、有望なスタートアップやVCを見つけてきます。しかし、どれだけ良い案件を持ち帰ってきても、それを受け取る事業側、いわゆるキャッチャーが乗り気でなければ、話は前に進みません。

これはCVC担当者自身がコントロールできない領域にあります。どれだけ良いスタートアップでも、事業側がNoと言えば、何も起こりません。社内政治を含む構造的な問題でもあり、だからこそ、CVC担当者の能力や努力が十分に報われない場面が生まれてしまうと感じます。

日本国内での活動の場合、CVCが見つけてきたスタートアップやVCに対して、キャッチャー側があまり興味を示さなかったとしても、CVC担当者としてのダメージが大きくなりにくいところもあるかと思います。特に、CVCの親会社がでよく知られている場合はなおさらです。たとえ事業側の温度感が高くなかったとしても、「あの会社なら一理ある」と、一定の理解や納得が得られやすいからです。

一方で、アメリカではこの問題はより深刻になります。日本では誰もが知っている企業であっても、アメリカではほとんど知られていないケースが多々あります。私自身、リクルートのCVCで働いていた頃、「Indeedの親会社のリクルートで働いています」と伝えると、「Indeedの親会社って日本企業なの?」「Indeedの子会社じゃなくて?」と聞かれることが頻繁にありました。リクルートという会社自体を一から説明しなければならない場面も少なくありませんでした。

このような環境では、「申し訳ないが、今回は社内の反応があまり積極的ではなかった」という事実を、温度感や背景も含めて、アメリカのスタートアップ側に正確に伝えることは、はるかに難しくなります。

だからこそ、担当者の方々によくお伝えしたいのは、「コントロールできない部分(社内調整)を一生懸命やるのは当然として、同時にコントロールできる部分に、より多くの意識を向けるべきだ」ということです。

具体的に言うと、スタートアップやVCと真摯な関係性を築くことです。『○○会社所属のCVC』としてスタートアップと向き合うのではなく、一人の業界プロフェッショナルとして関係を築いていく、という姿勢です。

そのためには、スタートアップを軽くレビューして「とりあえず面白そうだから社内に投げてみよう」というスタンスではなく、そのスタートアップを真剣に理解しようとする姿勢が求められます。自分自身が本当に興味を持てて、かつ会社の事業側にとっても意味のあるインパクトを生み出せそうだと、ある程度確信できるスタートアップだけを選び、社内につなぐことが重要だと思います。

人は、こうした本気度を驚くほど敏感に感じ取ります。「この人は本当に自分のために社内で頑張ってくれているんだ」と。これにより、たとえ社内のキャッチャーがその価値を見抜けず、結果的に話が進まなかったとしても、そのスタートアップやVCとの関係性は残りやすくなります。努力した事実は相手に伝わりますし、その信頼が次の新しい機会につながります。

日本人は真面目な方が多く、物事がうまく進まなかったときに、あまり会社のせいにしたがらない傾向があるように感じます。ただ、会社中心ではなく、「自分とエコシステムとの関係性」を大切にする視点を持つことで、担当者自身のキャリアも確実に豊かになります。そして結果的に、それが会社にとっても、より良い機会を引き寄せることにつながります。すなわちよりWin-Winでヘルシーな在り方になるのです。

Reference:

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