#242 ついにAIがVCファンドの「LP」世界を飲み込む

増えていくLP向けのソフトウェア・ソリューション
46(Youngrok) 2025.09.01
誰でも

先週、人生で初めてぎっくり腰になりました。ちょっとした動きをしようとするだけでも激痛が走り、かなり大変だったのですが、よりによって重要な対面ミーティングやコールが重なっていて、痛み止めを飲みながらなんとか重要なミーティングは乗り切りました。他の業務は来週頑張らないといけないですね。

妻が何度か経験していたのですが、あんなに辛がっていた理由をようやく理解しました。やはり人は自分で体験してみないとわからないものですね。週末ようやく多少は人間らしく歩けるようになりましたが、どれだけ仕事が忙しくても、体のことはきちんと考えないといけないですねー

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何度か以前の記事でも話したように、今やテクノロジーの活用はVCにとって当然のこととなりつつあります。そしてAIによってこの流れは一層加速しています。デューデリジェンス用のメモはAIによって作成され、データルームは自ら資料を読み込みます。パートナーたちはもはや数字を探し回ることに時間を費やすのではなく、それが意味するところを議論するようになっています。

そして同じ流れが、VCファンドに投資を行うLPにも押し寄せています。LPが長年抱えてきた慢性的な課題、例えば標準化されていないレポートやバラバラの報告タイミングを直接解決しようとするソフトウェアが登場してきているのです。

ArchはLPのデジタル運営デスクであることを掲げています。投資後の文書集約やデータ標準化といった反復的な作業を解決すると説明しています。Vantagerは投資前の段階に特化しています。複雑なデータルームを読み解き、重要なデータを抽出し、投資担当者がすぐに検討できるアウトプットを提供するプラットフォームを構築しています。一方、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)から資金調達を行ったThe Coterieは、オンボーディングやKYC/AML、ファンド管理のワークフローを自動化し、現在は複数の著名VCから資金調達を行なったAllocateに買収され、より大きなプライベート市場に必要なシステムの一部となりました。

問題は、これらがベンチャースケールに拡張可能な事業なのかどうかです。GPごとにレポーティング体系は異なり、レガシーシステムもそれぞれ固有のルールを持っているため、最終段階では結局人間の関与が避けられません。AI Agentによって解決されないといけないところですね。また、LPという市場の大きさも問題です。しかし重要なのは、この種のシステムに対する需要は明らかに存在するという点です。私自身も常にこの点を大きな課題だと考えてきましたし、周囲のLPたちも同じ問題にそれぞれ異なる方法で取り組んでいます。中にはあきらめてしまうLPもいます。

私たちはファンド・オブ・ファンズとして、自らテクノロジースタックを構築しました。テクノロジーを活用したデューデリジェンス、そして投資後に得られる情報をインサイトへと転換する能力は、競争力そのものだからです。

テクノロジーが投資先VCの選定に必要な判断を代替することはできません。しかし、その判断が十分に発揮されるのを妨げる反復的な作業を減らすことは重要であり、必ず解決すべき課題です。これらの企業がベンチャースケールに該当するかどうかにかかわらず、この新しいタイプのLP向けテクノロジーは今後、不可欠なインフラとなっていくはずです。

References:

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