#176 トップティアVCを離れる人々
先週、サンフランシスコ市内を運転していた時、警察がグーグルの自動運転車ウェイモに何かをしようとするのを見かけました。一瞬見たところ、その車が交通法規を違反したように見えました。しかし、問題はその車には運転手がいないということです!一般的に、交通違反の切符は「運転手」に対して交付しなければなりません。では、運転手のいない車には警察は何ができるのでしょうか? 少なくとも今のカリフォルニアでは、警察が人間の運転手なしで完全自動運転モードで走行していて交通法規を違反したウェイモに対して切符を交付できるメカニズムはないそうです。困っていた警察の表情がまだ鮮明に残っています。
警察官の前にある車がウェイモ(上にライダが装着された白い車両)
最近、アメリカのトップティアVCで働いていた多くの人がそのVCを辞めて新たに自分のVCを創業しています。これば別に以前からあったことですが、最近は特にエマージングVCファンド市場に参入する人が増えているのです。
セコイアからスピンオフした最も影響力のある暗号資産VCの一つであるパラダイムの元パートナーであるケイシー・カルーソは、フロンティアテクノロジー関連のスタートアップに投資を行うVCを立ち上げました。グーグルベンチャーズの最年少パートナーであるテリー・バーンズも自身のVCを立ち上げています。
もっと有名な人たちの中では、ベッセマー・ベンチャー・パートナーズのエダン・カズワイル、アンドレセン・ホロウィッツのクリスティーナ・シェン、インデックス・ベンチャーズのマーク・ゴールドバーグの3人も力を合わせて新しいVCを立ち上げています。NEAで20年近く勤務したベテラン投資家ピート・ソンシーニも、DataBricksの共同創業者と一緒にファンドを設立しています。このような事例は、最近ニュースでも公開され、話題になったほんの一部に過ぎません。本当に多くの人が前のVCを辞めて、自分のVCを立ち上げているのです。
前回の記事「#161 メインストリームのアセットクラスになったVC」で述べたように、ベンチャーキャピタルはもはやメインストリームのアセット・クラスのひとつとして定着していると言えます。このような地位の向上により、大型ファンドは引き続き大きな規模を維持、あるいはさらに大きくなっています。しかし、同時に、どちらかというと10~20年前のVCモデルに近い、新しいテクノロジーや新しいビジネスモデルに最もリスクの高い賭けをする小規模なVCも数多く誕生しています。上記のニュースは、より多くの優秀な人材が、以前彼らが働いていたVCに比べるとはるかに少ないファンド規模で、初期段階の創業者を発掘して投資を行う場所に参入していることを示しています。
これはまた、現在のアーリーステージの投資環境がいかに堅調であるかを示しています。総額で見ると、今は2021年頃にピークを迎えたベンチャー投資額に比べると少ないです。しかしPre-seedとSeed投資を見ると、下のグラフの通り2021年前の市場が異常になる前の水準より活発です。もしアーリーステージ企業への魅力的な投資機会が少なかったら、多くの人が有名なVCを辞めて自分の会社を設立することはなかったでしょう。
US Pre-seed/seed deal activity (with deal count estimation)
私は上記に挙げたほとんどの人に会いましたし、他にも多くの人にすでに会っています。彼らと彼らファンドの投資戦略について話し合い、デューデリジェンスを行うことは、自分が今の仕事を楽しめている理由の一つだと言えます。 今後ももっと多くの人に会えることを楽しみにしています!
References:
・https://www.wsj.com/articles/pete-sonsini-early-investor-in-databricks-gets-closer-to-launching-new-vc-firm-958e2c9d・Pitchbook NVCA Venture Monitor 2024 Q1
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