#119 今はアーリーステージスタートアップにとって絶好のタイミング

資本コストが下がった時には伸びる体制が整っている
46(Youngrok) 2023.04.17
誰でも

車のタイヤがパンクしました。アメリカでは子供までいると車がないと生活ができません。ちょうど子供を迎えに行く時に気づいたので、かなり焦りました。幸いいつも行っている車の整備所1分距離なのでそのまま直しに行けたのですが、数年後には郊外に住むのも考えいるので、タイヤの交換くらいはできるようにしておかないとと思いましたね。ただ、近未来には整備ロボット車が家まで来てくれると思うので、やはりタイヤの交換はできなくても…

FRBは先月、昨年40年ぶりの高水準に達したインフレに対抗するため、金利をさらに0.25%引き上げることを決定しました。1980年代前半以来最も速いペースで利上げです。FRBは、インフレ率を下げるためにさらにもう一度の利上げを検討しているようです。もうしばらく金利は高止まりしそうです。

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インフレーションとFFレートの推移

インフレーションとFFレートの推移

金利が上がると、ベンチャーキャピタル投資への懸念は膨らみます。資本コストが上昇すると、ベンチャーキャピタルのようなリスクが高い投資アセットに資本を配分することが難しくなるからです。今は金利がほぼ5%に近い中、投資家がゼロに近いリスクで5%のリターンを生み出せます。もちろんベンチャーキャピタルに投資する際には5%以上のリターンを狙うのですが、ほぼ確実に5%のリターンが得られる中、わざわざベンチャーキャピタルのような最もリスクの高い資産に大きな賭けをするインセンティブが少ないです。

ですので、ベンチャーキャピタルファンドもスタートアップも、当面は大変な思いをするのは避けられません。実際、私が会っている米国のベンチャーキャピタルファンド及びスタートアップ両方とも資金調達に苦労をしています。

さて、WSJの記事によると、金利の上昇の大体2−3年後にはインフレ率が下がるんだそうです。これはイギリスのケースですが、同じシナリオがアメリカでも起きると仮定すると、2025~2026年頃にはインフレ率が低下し、さらに重要なのはこれにより金利も下がるかもしれません。つまり、2、3年後には資本コストが再び下がる可能性があるのです。

シード・アーリーステージのスタートアップからすると、今は資金調達が難しいのは事実です。しかし、今資金調達ができれば、2−3年後ミッド・レイトステージの資金調達でより多くの資金が必要になったときには、今より低い資本コストで資金調達ができるかもしれません。当然ミッド・レイトステージの資金調達にはより多額の資金が必要で、資本コストが低いことに越したことはありません。その逆はもっと大変です。2−3年前にアーリーステージの資金調達をしたスタートアップたちが今のミッド・レイトステージで苦労しているのを我々は目の当たりにしています。

いつもお話しさせて頂いた通り、経済状況に関係なく、魅力的なスタートアップは引き続き資金調達をして行きます。今回も例外ではないでしょう。今景気後退の懸念があるにもかかわらず、AI関連のスタートアップがどれだけ資金を集めているかを見ています。もちろん妥当なバリュエーションかどうかの議論はあります。しかし、要点は魅力的なスタートアップはこれからも引き続き問題なく資金調達をしていくでしょうし、今生き残ることができたスタートアップは、中長期的に生き残りやすい環境に入っていくということです。私たちの日常生活を変えた多くの偉大なスタートアップが、2008年、2009年、2010年、つまり世界金融危機の時期に誕生しているのはよく知られている話です。

2008年ー2010年の間に創業されたスタートアップの例

2008年ー2010年の間に創業されたスタートアップの例

References:
・Higher Interest Rates Can Take a Long Time to Bring Down Inflation - https://www.wsj.com/articles/higher-interest-rates-can-take-a-long-time-to-bring-down-inflation-11666517405
・Fed Official Backs Higher Interest Rates as Banking Stresses Fade - https://www.wsj.com/articles/fed-official-backs-higher-interest-rates-as-banking-stresses-fade-873b37fc

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