#162 アメリカVCからの資金調達に必要なもの

創業者及び初期投資家のグローバルマインドセットとネットワーク
46(Youngrok) 2024.02.12
誰でも

この記事を書いている2月11日はアメリカ最大のスポーツイベントの一つであるスーパーボウルがあります。今現在、サンフランシスコ49ersとカンザスシティチーフスの試合が行われていますが、サンフランシスコのチームなので、町全体が盛り上がっています。私の家の前にあるブルワリーでは、中に人がいっぱいで、外にテレビまで設置して試合を見ています。私は実はアメリカンフットボールを普段見るわけでもないので、あまり興味はないのですが、サンフランシスコの住民として、どうせなら49ersが勝ってほしいですね!(記事を公開するタイミングでは負けが決定していました。残念です!)

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先月、東京に本社を置く人工知能スタートアップ「Sakana AI」が、米国の超一流VCであるLuxと弊社の出資先でもあるKhosla Ventures、そして注目を浴びる新興VCであるBasis Set Venturesなどから3千万ドル(45億円相当)のシードラウンドを誘致したというニュースが大きな話題になりました。これらVCは、米国現地のスタートアップからも最も崇められるVCです。Sakana AIはどのやって彼らから資金調達をしたのでしょうか。

Sakana AIの共同創業者であるDavid Ha (CEO)とLlion Jones (CTO)。

Sakana AIの共同創業者であるDavid Ha (CEO)とLlion Jones (CTO)。

私はSakana AIのチームとは直接知り合いではありませんが、Davidと私はゴールドマン・サックスの東京オフィスで働いていた時期が重なるので、共通の知人が何人かいます。それには同様に同じ時期にゴールドマンで働いていた私の妻も含まれています。妻はDavidと直接仕事をした経験があります。

彼女によると、彼は非常に賢く、また人当たりの良い方だそうです。 その他の状況を見ても、Sakana AIチームが開発してきた技術が、LuxやKhoslaのようなVCが注目するほどの画期的なものだと確信しています。しかし、私はそれ以外にも何か理由があるのではないかと思いました。日本(そして韓国)にはきっと同じような素晴らしいスタートアップがあるはずです。その中でSakana AIはどうやってそのような資金調達をすることができたのでしょうか。

PitchBookのデータによると、Sakana AIを含め、米国の著名VCから資金を調達した日本と韓国の初期段階のスタートアップが少数あります。後期段階のスタートアップまで含めると、日本のSmartHRや韓国のWoowa Brothersのような事例もありその数はもう少し増えます。しかし、これらの会社はすでにユニコーンステージでの資金調達なため、初期段階のスタートアップとは性質が異なると思います。

数少ない日本と韓国の初期段階のスタートアップのうち、米国の著名なVCから資金調達をしたケースをいくつか調べた結果、一つの興味深い共通点を見つけることができました。それは、創業者、もしくはそのスタートアップの初期投資家がグローバルなマインドセットやネットワークを持っているという点です。

Sakana AIの例に戻りますが、2人の共同創業者はイギリスとトロントで勉強しました。また、2人ともグーグルやゴールドマン・サックスのようなグローバル企業で働いていました。つまり、少なくとも彼らは英語という言語の壁がなく、また文化の壁もなく(あるいは低い)、米国の投資家の目線に立ってコミュニケーションができるのです。

もしくは、グローバルマインドを持つ初期投資家を得た例として、TOSSで有名なViva Republicaは韓国で成功したスタートアップの一つです。 創業者のイ・スンゴンさんはソウル大学歯学部を卒業した後、医者としてキャリアを始めました。Sakana AIの創業者のようにグーグルのようなグローバル会社で働いた経歴はありませんが、彼はシリコンバレーに本社を置く韓国系のGPさんが創業したアルトスベンチャーズからシード投資を受けました。アルトスベンチャーズは韓国国内のネットワークを強く持つ一方で、米国現地のVCのネットワークにも入り混んでおり、シリコンバレーのVCの形式で投資をします。Viva Republicaはその後の調達ラウンドでBessemerのような米国の他の著名なVCから資金調達もしたのですが、その過程でアルトスベンチャーズが大きなサポーターになったことは想像に難くないです。

米国のVCから資金調達をするためには、サービスや技術そのものが魅力的なポテンシャルを持っていることは当然の要素です。一部の創業者は、英語が得意で、米国でもネットワークがある人を採用したと言います。しかし、それだけでは多くの場合不十分だと思います。初期段階の投資では、特に創業者が重要です。創業者自身がグローバルなマインドセットと経験を持つことが重要です。また、日本や韓国のローカル市場に対する専門性に加え、米国市場での経験とネットワークも備えていて、現地と米国市場の橋渡しをしてくれるVCがもっと必要です。

少なくとも後者については、私が今やって仕事を通じて貢献できるところもあると思っています。今後、そのような機会をうまく作って、日本と韓国でグローバルな視点を持つVCを支援し、それによってグローバル市場に対する経験が少し足りない創業者の方でも十分に海外投資家からアテンションがもらえるような事例を増やすことができればと思います。

References:

Our Investment in Japan’s Sakana AI 魚 to build nature-inspired AI foundation models - https://www.luxcapital.com/news/our-investment-in-japans-sakana-ai-to-build-nature-inspired-ai-foundation-models

Pitchbook - https://pitchbook.com/

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