#87 株価はスタートアップバリュエーションの預言者

株価下落の影響は時間差を持ってスタートアップ市場に押し寄せてくる
46(Youngrok) 2022.09.05
誰でも

サンフランシスコには公園が本当にたくさんあります。 ウィキペディアによると、市(City)が管理する公園だけで50個くらいあるそうです。 ここに州や連邦政府が管理する公園まで合わせれば、その数字はさらに大きくなります。 昨日は最近生まれた子供とLafayette Parkというところに行ってきましたが、子供ができるとどうしても活動に制約が生じる中で、行ける公園のオプションが多いという点は一筋の光で感じましたwサンフランシスコに長く住んでいる友人からパパになってから公園エキスパートになったという話を聞いたことがありますが、それがどういうことなのか実感がわいてきています!

Lafayette Park in San Francisco

Lafayette Park in San Francisco

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プライベート市場への投資(=スタートアップへの投資)とパブリック市場への投資(=株式市場での投資)は異なるものです。成功するためには、全く異なるスキルセットと経験が必要です。優れたベンチャーキャピタルであることが、必ずしも優れた株の投資家であるとは限らないし、その逆もまた然りであります。

このことは、最近タイガー・グローバル(Tiger Global)のような多くのクロスオーバー投資家に起こったことからもわかります。タイガー・グローバルは、どちらかというと株式市場への投資家でしたが、ここ数年、積極的にスタートアップ投資に参入してきました。彼らはレイトステージ投資では成功してきましだが、アーリーステージ投資では大きな疑問符がついています。

セコイア(Sequoia)のような伝統的なVCも同じで、今後、より多くの公開株を保有しようとしています。前回の記事「#86 1.8兆円の損失を被ったセコイア・キャピタル」でも紹介したように、彼らは保有する上場企業で大きな損失を被っています。プライベート市場で成し遂げきたような大きな成功を、パブリック市場でも成し遂げれるどうか、その能力はまだ証明されていません。

しかしながら、パブリック市場は、プライベート市場に何が起こるかを予測する良い指標となり得ます。S&P500の伸びが落ちるときは、プライベート市場のバリュエーションの伸びも落ちる傾向があるのです。下のチャートをご覧ください。

S&P 500およびVC Valuationの成長トレンドを時間軸に沿ってプロット(Valuation data source: PitchBook)

S&P 500およびVC Valuationの成長トレンドを時間軸に沿ってプロット(Valuation data source: PitchBook)

このチャートは、回帰分析を使って、スタートアップのバリュエーションと米国の株価指標であるS&P500のそれぞれの成長トレンドを示しています。数値が0より大きければ、その特定の四半期から過去1年間は成長傾向にあることになります。例えば、2009 年 1Q では0を下回っているので、2008年1Qから2008年4Qにかけて、スタートアップのバリュエーションとS&P500の両方が縮小トレンドあることを表します。

さて、矢印で表しているところですが、S&P500(青色)が下がっていくと、数四半期後にはスタートアップのバリュエーション(赤色)も下がっていくことがわかります。それはグローバル金融危機が起きた2007年から2009年にかけても起きましたし、2010年、2011年、2015年、2018年ごろにも起きました。スタートアップのバリュエーションが下がった時にS&P500が下がることはないですが、S&P500が下がると、スタートアップのバリュエーションも時間差を持って下がる傾向にあるのです。この相関はアーリーステージよりもレイター・ステージのスタートアップになればなるほど強くなります。

プライベート市場とパブリック市場で相関はしているものの、影響が出るタイミングがズレているので、引き続きこれら二つの資産クラスはポートフォリオの分散とリスクのコントロールに有効です。パブリック市場がプライベート市場にどのような影響を与えるのかを理解することで、プライベート市場の投資家としてどのような投資戦略を考える上で大きに役に立つと思います。

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